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2016 年度 実施状況報告書

肝細胞癌発癌過程におけるオートファジーを介した分子制御機構の解明および臨床的意義

研究課題

研究課題/領域番号 16K10565
研究機関新潟大学

研究代表者

坂田 純  新潟大学, 医歯学系, 講師 (70447605)

研究分担者 小林 隆  新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (40464010)
若井 俊文  新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード肝細胞癌 / オートファジー / p62 / リン酸化p62 / KEAP1 / 腫瘍増殖能亢進 / 抗癌剤耐性獲得 / HCV
研究実績の概要

平成28年度は、HCV陽性肝細胞癌患において、リン酸化したp62がNrf2に依存的にがん代謝を活性化することを介して癌細胞の増殖能亢進や抗癌剤耐性をもたらすことを明らかにした。
p62は、細胞生存、細胞増殖、細胞死に関わる多機能タンパク質である。p62は349番目のセリン残基(S349)がリン酸化されると、転写因子Nrf2の抑制タンパク質であるKeap1をリン酸化p62の基質上に集積させて不活化しNrf2を活性化することが知られている。また、ヒト肝細胞がん組織において異常集積を認める好酸性のマロリー小体の主要構成成分はp62であることが明らかになっており、ヒト肝細胞癌においてもNrf2の恒常的活性化が予想されていた。
今回、内在性にp62をほとんど発現していない肝細胞がん株Huh-7に、S349リン酸化模倣ないしはリン酸化不能p62変異体を発現させ、安定同位体でラベルされたグルコースないしはグルタミンを用いたトレース実験を行った。その結果、肝細胞がんでのNrf2の恒常的活性化は、グルコースからのUDP-グルクロン酸合成、グルタミンからのグルタチオン合成を促進させることが明らかになった。また、薬剤抱合に関わるUDP-グルクロン酸およびグルタチオンの産生亢進により、リン酸化p62をもつ肝細胞がん細胞はソラフェニブやシスプラチンに対する薬剤耐性を獲得し、グルタチオンの産生亢進により腫瘍の増殖が促進されることが明らかになった。
ヒトの肝細胞癌の腫瘍サンプルにおいてp62、リン酸化p62、KEAP1特異的抗体を用いた免疫組織染色および二重免疫蛍光染色を実施したところ、HCV陽性の肝細胞癌においてこれらのタンパク質が共局在して発現していることを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

HCV陽性肝細胞癌患において、リン酸化したp62がNrf2に依存的にがん代謝を活性化することを介して癌細胞の増殖能亢進や抗癌剤耐性をもたらすことを明らかにすることができ、学術誌にその成果を発表した。このことにより、当初の目的の1つである、p62およびNRF2の動態解析を実施することにより、肝細胞癌におけるp62の蓄積・翻訳後修飾と臨床病理学的因子との関連を明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

平成29年度以降は、2013年より前向きに収集してきたHCC患者のホルマリン固定標本の組織切片とそれに対応したRNAおよびタンパク質試料を用いて、特に、近年増えているNASH関連の肝細胞癌に関して解析を行う予定である。
具体的には、
①後ろ向きサンプルと同様にホルマリン固定標本から薄切切片を作成し、p62、リン酸化p62、KEAP1そしてNQO1の特異的抗体による免疫組織染色および二重免疫蛍光染色を行う。
②RNA試料を用いreal-time PCR法によりNRF2の標的遺伝子の発現、特にNRF2依存的にがん代謝に関与することが明らかになったペントースリン酸経路やグルタミノリシスに関与する酵素群の遺伝子発現を検証する。
③タンパク質試料を用いp62、KEAP、NRF2標的遺伝子産物の動態、そしてオートファジー関連遺伝子産物の動態をウエスタンブロット解析により調べる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] p62/Sqstm1 promotes malignancy of HCV-positive hepatocellular carcinoma through Nrf2-dependent metabolic reprogramming.2016

    • 著者名/発表者名
      Saito T et al.
    • 雑誌名

      Nat Commun

      巻: 7 ページ: 12030

    • DOI

      10.1038/ncomms12030.

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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