研究課題/領域番号 |
16K10566
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
坂口 孝宣 浜松医科大学, 医学部附属病院, 准教授 (70313955)
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研究分担者 |
森田 剛文 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60464129)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肝臓 / 代謝 / 門脈塞栓術 / 門脈血流 |
研究実績の概要 |
マウス門脈結紮後代償的に肥大する非結紮肝葉組織中では中性脂肪(triglyceride:TG)、引き続いて細胞膜構成成分Phosphatidylcholine (PC)が増加することが判明した。しかし、TG合成に関与する転写因子peroxisome proliferator-activated receptor α(PPARα)、hepatocyte nuclear factor 4(HNF4)は非結紮葉では不変だった。また、lyso-PCに遊離脂肪酸を組み込んでPCを作る酵素(LPCAT3)、 TGからdiglyceride (DG)を放出させる酵素adipose triglyceride lipase (ATGL)やDGにリン酸化コリンを結合させてPCを作るdiacylglycerol cholinephosphotransferase (CPT)を調べたが、いずれの発現も変化しなかった。しかし、脂質輸送に関与するfatty acid-binding protein (FABP)が非結紮肝葉組織中で有意に増加したことから、血中脂質取り込み増加がTGやPC増加の原因と考えられた。 門脈結紮後の肝血流変化を確かめるため、血中では蛍光物質と化すインドシアニングリーン (ICG)を経静脈的投与後に近赤外線カメラで観察した。門脈結紮7日後マウスでは、委縮した結紮葉のICG蛍光輝度は代償性肥大した非結紮葉に比べて有意に低かった。また、結紮直後でも結紮葉ICG蛍光輝度は有意に低かった。この結果は、肝細胞の物質取り込み量は門脈血流に大きく依存していることを示唆する。 以上から、門脈結紮後に門脈血全部を請け負った非結紮葉では腸管吸収された脂質を肝細胞内に輸送して毒性の低いTGの形で多量に貯蔵する、そしてDGや脂肪酸をTGから供給することで細胞膜の源となるPCを増加している、と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初、de novo脂質合成の増加が非結紮肝葉におけるTG, PCの増加の原因と考えていたが、門脈血流の変化が原因と判明したこと。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果から、肝臓の取り込み能は門脈血流に大きく依存している可能性が示唆された。ICG蛍光法の結果は、実臨床において門脈結紮術後の肝取り込み能の変化を推察できる可能性があると思われる結果であった。この結果は現在論文を作成中である。
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