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2016 年度 実施状況報告書

システインの肝障害抑制に関する作用機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K10567
研究機関名古屋大学

研究代表者

横山 幸浩  名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80378091)

研究分担者 菅原 元  名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (00402587)
山口 淳平  名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00566987)
梛野 正人  名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (20237564)
伊神 剛  名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (50420378)
江畑 智希  名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (60362258)
國料 俊男  名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (60378023)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード肝星細胞 / エンドセリン / 敗血症性ショックモデル
研究実績の概要

肝虚血再灌流や敗血症性ショックに伴う肝障害メカニズムとして最も重要なものにクッパー細胞や肝星細胞の活性化がある。したがって本研究では、「肝虚血・再灌流や敗血症性ショックなどの肝ストレス下におけるクッパー細胞や肝星細胞の過剰な活性化は、システイン投与により抑制され、その作用が肝障害を抑制することにつながる」という仮説を立てこれを検証した。研究はクッパー細胞、マクロファージ、肝星細胞の細胞株を用いたin vitroの実験だけでなく、ラットの肝虚血・再灌流モデルや敗血症性ショックモデルを用いたin vivoの実験も行い、これらに見られる肝障害に対するシステイン投与の効果を分子、細胞レベルで検証することを目的とした。
まず最初に肝星細胞を80万個コラーゲンコートしたディッシュ上にまき、24時間後にL-Cysteineを40mMで投与した(対照としては生理的食塩水を投与)。さらに30分後に肝星細胞の収縮を誘発する因子であるエンドセリンを100nMで投与し、その4時間後に肝星細胞の収縮を調べた。L-Cysteineを投与した群では対照群に比べて肝星細胞シートの収縮が抑制された。肝星細胞がエンドセリンに反応して収縮する際には細胞内カルシウム濃度が上昇することが知られている。我々はさらに他の実験系を用いて、細胞内カルシウム濃度の変化を測定したところ、L-Cysteineを事前に投与すると、エンドセリン投与後の細胞内カルシウム濃度の上昇が強く抑制されることを見出した。さらにin vivoの実験ではラットにリポポリサッカライド(LPS)を腹腔内投与する敗血症性ショックモデルを用いて、LPS投与後に生じる肝障害の程度を、事前にL-Cysteineを静脈内投与した群と対照群(生理的食塩水投与)で比較すると、対照群に比べL-Cysteine投与群では血清ALT値が有意に低い結果が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

肝星細胞を用いたin vitroの研究では、当初の予測どおりL-Cysteineを事前に投与することにより肝星細胞のエンドセリンに対する反応が抑制された。その一つはエンドセリン投与によりもたらされる肝星細胞の収縮という物理的な変化であり、もう一つはエンドセリン投与に反応して肝星細胞で起こる細胞内カルシウム濃度上昇という化学的な変化であった。このような現象を観察したことは、当初の仮説が正しかったことを示している。この意味で本研究はおおむね順調に進展していると判断する。しかしながら、L-Cysteine投与でなぜ肝星細胞の活性化が抑制されるのか、その分子細胞学的メカニズムは未だに不明である。またL-Cysteineの投与が細胞毒性をもたらすのかどうか、もしもたらすとすればどれくらいの濃度なのかも検証しきれていない。肝星細胞を用いた実験はin vitroであり、生体で同様の現象が観察できるかも不明である。ただ、LPSを腹腔内投与したモデルでは、L-Cysteine投与により肝障害が抑制される傾向にあった。LPS腹腔内投与による敗血症性ショックモデルでは、内因性のエンドセリンが過剰産生されること、また肝星細胞がこのエンドセリンに過剰に反応して収縮し、類洞レベルでの微小循環障害が生じ、それが肝障害につながることが以前の研究で分かっている。L-Cysteine投与はおそらくこれらの一連の反応を抑制し、それが結果的に肝障害抑制に繋がっていると推測される。この仮説を証明するためには今後さらにin vivoの実験を重ねてゆく必要がある。

今後の研究の推進方策

今後はLPS腹腔内投与による敗血症性ショックモデルだけでなく、肝虚血再灌流モデルを用いてL-Cysteineの事前投与が肝障害を抑制することができるかどうかを検証する。その場合、L-Csyteineを異なる濃度で投与し、細胞毒性をもたらさず、最も有益な効果をもたらす至適濃度を見い出す必要もある。さらに、どのようなメカニズムでL-Cysteineが肝障害を抑制しているのかを検証するために、LPS腹腔内投与後、あるいは肝虚血再灌流後に生体顕微鏡あるいは分離肝灌流のテクニックを用いて、エンドセリン投与後の類洞における微小循環障害発生の程度や、門脈潅流圧上昇の程度を調べてみる必要がある。またin vivoの実験では、これまでに肝星細胞の細胞株を用いた実験のみを行ってきたが、肝障害時に重要な働きをするもう一つの細胞であるクッパー細胞の細胞株を用いた実験も行ってゆく必要がある。クッパー細胞は細胞株が存在しないため、ラットの肝臓をコラゲナーゼで灌流して細胞を分離したprimary cultureを用いて実験を行う必要がある。以上のように、ラットを用いたin vivoの実験と細胞を用いたin vitroの実験を同時並行して行ってゆく予定である。

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公開日: 2018-01-16  

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