研究課題/領域番号 |
16K10571
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井口 公太 京都大学, 医学研究科, 医員 (40771118)
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研究分担者 |
池川 雅哉 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60381943)
波多野 悦朗 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (80359801)
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 代謝物フラックス解析 / 転移性肝癌モデル / グルコース代謝 |
研究実績の概要 |
平成28年度において肝臓代謝物質の定量・イメージング質量分析(IMS)において、Heat stabilizer(HS)による酵素失活による代謝物の安定化が有用であり、かつアデノシン三リン酸(ATP)を含めた代謝物群は凍結臓器ではなく生臓器に対するHSの方が安定的にin vivoに近い情報を抽出出来ることを明らかとした。 平成29年度においてはその実績を背景に、マウス肝内代謝物質の網羅的定量解析を実施、HSの条件により階層的クラスタリングの手法により様々な代謝物を分類可能であることを明らかとした。次にHSの有用性を明らかとすべく、動物からsampling後に組織の切り出しに時間を要するモデル、例えばラット転移性肝癌モデルにおける癌組織の代謝物の網羅的定量を実施した。本モデルではHSを採用することにより、安定同位体(13Cグルコースと13Cグルタミン)を利用した代謝物フラックス解析を実施することが可能であり、癌特異的なエネルギー代謝経路をvivoモデルで明らかにした。また癌組織内部での代謝物分布のheterogeneityをIMSにて可視化した。 一方で、マウス肝切除肝再生モデル(70%肝切除モデル)、肝不全モデル(90%肝切除モデル)においても、肝切除割合の限界を規定するものがATPを含めた代謝物網羅的解析から明らかとすることが出来るか、検討中である。肝不全モデルにおいては低血糖による早期死亡とグルコース補充によるrescueが報告されており、グルコース補充に伴う代謝物解析を、適切なモデルの確立とタイミングの検討を実施し、同様にフラックス解析を利用して、実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画当初はATPの可視化と門脈圧のshear stressに着目して、肝再生・肝不全のメカニズム解明を目標としたが、IMSの検出限界・空間解像度を考慮すると、現実的ではないことが分かってきた。一方でATPのみに着目せず、代謝物全体の景色から、ATPを含めたエネルギー代謝とその流れ(フラックス解析)を動物モデルに採用することにより、新規知見が得られることを目標としている。
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今後の研究の推進方策 |
肝再生・肝不全マウスモデルにおける解析について後者は高確率にて早期に死亡するため、適切な評価タイミングとグルコース補充によるrescueの程度を含めて、安定的なモデル作成が現時点では不十分である。ラットへの変更も視野に入れつつ、実験を継続する。
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