研究課題/領域番号 |
16K10572
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野田 剛広 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50528594)
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研究分担者 |
和田 浩志 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 消化器外科 副部長 (00572554)
後藤 邦仁 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助手 (10362716)
阪本 卓也 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (40645074)
江口 英利 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90542118)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 胆道癌 / 低酸素 / 上皮間葉移行 / 化学療法耐性 |
研究実績の概要 |
当院にて根治切除術を施行した、胆道癌切除検体におけるPLOD2の発現は、52例中26例において発現を認めた。強陽性群と低陽性・陰性群の2群比較においては、強陽性群において有意にリンパ節転移陽性の頻度が高率であり(p=0.037)、また病期の進行した症例が高頻度に認められた(p=0.001)。胆道癌切除例において、PLOD2高発現群における5年無再発生存率は、低発現群と比較して有意に低率であった。また5年生存率は、高発現群13%、低発現群49%と、PLOD2高発現群にて低率であった(p<0.0001)。全生存におけるCoxの比例ハザードモデルにおける単変量および多変量解析では、PLOD2が独立した予後不良因子であった(p=0.019)。 Gemcitabine(GEM)の長期暴露により樹立したGEM耐性株では、PLOD2のmRNA発現は2.5倍から12倍に上昇を認め、western blotにより蛋白レベルでも発現の上昇を認めた。耐性株は、形態的にもspindle様に変化を認め、上皮間葉移行が関与していることが推察された。siRNA法によりPLOD2の発現は親株と同レベルまで抑制を認めた。siRNA法によるPLOD2の発現抑制により、GEMに対する化学療法耐性の改善を認めた。GEM耐性株において、EMT関連マーカーである上皮系マーカーのE-cadherinの発現低下、間葉系マーカーのN-cadherinの発現亢進を認めた。siRNAによるPLOD2の発現抑制により、E-cadherinの発現の回復、N-cadherin、Vimentin、SNAI1の発現の減弱を認めた。 このように胆道癌において、PLOD2の発現が有意な予後予測因子として同定され、さらには化学療法の感受性に上皮間葉移行を介してPLOD2の発現が関与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度においては、肝胆膵領域癌細胞株における低酸素ストレスによるHIF-1を介したPLOD2発現解析、臨床検体を用いた免疫組織染色によるPLOD2発現解析および臨床病理学的因子との相関比較・予後解析を、胆道癌、膵癌に関して細胞株および切除検体を用いて行う予定であった。胆道癌切除検体において、免疫組織染色を行い、再発生存および全生存において、PLOD2の発現例は予後不良であることが明らかとなった。 平成29年度の研究実施計画においては、肝胆膵領域癌細胞株におけるウイルスベクターを用いたPLOD2強制発現株の樹立および機能解析、HIF-1/PLOD2シグナルにおけるEMT誘導の解析、ヌードマウスにおける肺転移モデル樹立。PLOD2による肺転移形成能の評価の予定であった。胆道癌細胞株の低酸素培養により、PLOD2の発現が増加することを確認した。Western blotにより蛋白レベルでも確認を行った。低酸素培養により、細胞株は形態的にspindle様となった。GEMによる短期暴露によって、PLOD2の発現が継時的に上昇しており、PLOD2発現株としてGEM耐性株使用した。PLOD2に対するsiRNAによる発現抑制によって、化学療法耐性が改善していることが示された。化学療法耐性と上皮間葉移行との関連について検討した結果、上皮系マーカーのE-cadherinの発現低下、間葉系マーカーのN-cadherin等の発現亢進を認めた。 このように胆道癌において、仮説を裏付ける結果を認めた。膵癌においては研究の進捗は進まなかった。そのため、当初の予定において、やや遅れているとの判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書における平成29年度の研究計画では、⑥ヌードマウスにおける肺転移モデル樹立が進んでいないため、動物モデルにおける研究を進める予定である。また、線維芽細胞とPLOD2高発現株との共培養による細胞増殖の変化について、検討を進める予定である。 肺転移モデルの作成法については、尾静脈からの細胞株の全身投与や肺への直接投与などが挙げられる。マウスへの侵襲としては、尾静脈からの投与が簡便であるため、上記方法を試みる予定である。さらには、肺転移モデルにおいて、PLOD2の発現と腫瘍の形成に関して研究を進めていく。また同時に論文の作成にも取り掛かる。また膵癌に関する研究も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の計画において、今後はヌードマウスによる肺転移モデルの樹立を行う予定であり、また肺転移モデルにも尾静脈投与や局所投与などの様々は手法が考えられ、動物実験にて比較的多額の金額が必要と考えられる。今年度では、こられの研究に助成金を使用する予定である。
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