肝細胞癌転移抑制に向けた、癌幹細胞特性を示す独自誘導Ｓｈｅｒｅ細胞の標的分子解析

2016 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 16K10574
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 恒富 亮一 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10420514)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: 癌幹細胞

研究実績の概要

本研究は、予後不良な肝細胞癌を対象として、癌幹細胞 (CSC) を誘導・解析することで、肝内転移による再発の抑制に結びつけることを目的としている。本研究では、高い転移・浸潤能を有する低分化型由来の細胞株から独自に誘導したCSC表現型を示す浮遊細胞塊 (Sphere) を解析する。CSC としての顕著な表現型を示す独自のSphere 細胞を解析し、その後に臨床サンプルでのvalidation を行い、肝細胞癌術後肝内転移抑制のコンセプトを得る。特に、CSC 特異的バイオマーカーから、癌免疫療法や抗体・核酸医薬の候補分子を同定し、コンセプトを得る。本課題によって、転移性のCSC に効果的な抗癌剤や核酸医薬、免疫療法等による肝細胞癌予後の改善が期待される。
従来、CSLCは細胞集団から数%しか分離できなかったが、我々はCSLCを高効率に誘導することが出来、様々な機能解析や抗癌剤スクリーニングから既にCSC 特異的分子候補を得ている。独自の特殊培養によって、脱分化型由来HCC 細胞株からのCSLCの誘導を達成している。得られたCSLCは、高いsphere 形成能だけでなく、抗癌剤抵抗性や重度複合免疫不全マウスにおける高い肝転移能を示した。CSLCを用いての解析と臨床サンプルを用いての解析とを統合することで、CSLCと予後不良HCCの両者にて特異的な発現上昇を示す遺伝子を同定するに至った。この遺伝子の発現をノックダウンすると、CSLCの特徴である浮遊細胞塊が、元の肝細胞癌細胞のように接着系に戻ることを見いだし、さらに、CSLCの抗癌剤耐性化の解除にも関与することが示唆され、この遺伝子はCSLCの表現型とリンクした、肝細胞癌予後改善のための有望な治療標的・バイオマーカーであることが期待される。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

癌幹細胞の特徴である、sphere形成能や抗がん剤耐性能と機能的に関わる遺伝子を同定することに成功し、特許出願準備中であり、本研究は順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

同定遺伝子の機能解析を長期間に行うため (マウスでのin vivo実験)、ゲノム編集によりノックアウトを作成する。また、臨床サンプルを用いての解析も進める。

次年度使用額が生じた理由

論文投稿が年度内に完了しなかったため。

次年度使用額の使用計画

論文投稿費として使用する。

研究成果

• [雑誌論文] MicroRNA-6826 and -6875 in plasma are valuable non-invasive biomarkers that predict the efficacy of vaccine treatment against metastatic colorectal cancer. (2017)
  • 著者名/発表者名: Taiki Kijima, Shoichi Hazama, Ryouichi Tsunedomi, Hironori Tanaka, Hiroko Takenouchi, Shinsuke Kanekiyo, Yuka Inoue, Masao Nakashima, Michihisa Iida, Kazuhiko Sakamoto, Nobuaki Suzuki, Shigeru Takeda, Tomio Ueno, Shigeru Yamamoto, Shigefumi Yoshino, Kiyotaka Okuno, Hiroaki Nagano.
  • 雑誌名: Oncology Reports 巻: 37 ページ: 23-30
  • DOI: 10.3892/or.2016.5267
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Cetuximab strongly enhances immune cell infiltration into liver metastatic sites in colorectal cancer. (2017)
  • 著者名/発表者名: Yuka Inoue, Shoichi Hazama, Yukio Tokumitsu, Shinsuke Kanekiyo, Shinobu Tomochika, Ryouichi Tsunedomi, Yoshihiro Tokuhisa, Michihisa Iida, Kazuhiko Sakamoto, Sigeru Takeda, Tomio Ueno, Shigefumi Yoshino, Hiroaki Nagano.
  • 雑誌名: Cancer Science 巻: 108 ページ: 455-460
  • DOI: 10.1111/cas.13162
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Calreticulin is highly expressed in pancreatic cancer stem-like cells. (2016)
  • 著者名/発表者名: Satoshi Matsukuma, Kiyoshi Yoshimura, Tomio Ueno, Atsunori Oga, Moeko Inoue, Yusaku Watanabe, Atsuo Kuramasu, Masanori Fuse, Ryouichi Tsunedomi, Satoshi Nagaoka, Hidetoshi Eguchi, Hiroto Matsui, Yoshitaro Shindo, Noriko Maeda, Yoshihiro Tokuhisa, Reo Kawano, Tomoko Furuya-Kondo, Hiroshi Itoh, Shigefumi Yoshino, et. al.
  • 雑誌名: Cancer Science 巻: 107 ページ: 1599-1609
  • DOI: 10.1111/cas.13061
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Prediction of the efficacy of immunotherapy by measuring the integrity of cell-free DNA in plasma in colorectal cancer. (2016)
  • 著者名/発表者名: Masahiro Kitahara, Shoichi Hazama, Ryouichi Tsunedomi, Hiroko Takenouchi, Shinsuke Kanekiyo, Yuka Inoue, Masao Nakajima, Shinobu Tomochika, Yoshihiro Tokuhisa, Michihisa Iida, Kazuhiko Sakamoto, Nobuaki Suzuki, Shigeru Takeda, Tomio Ueno, Shigeru Yamamoto, Shigefumi Yoshino, Hiroaki Nagano.
  • 雑誌名: Cancer Science 巻: 107 ページ: 1825-1829
  • DOI: 10.1111/cas.13085
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Establishment of a Novel Model for Anticancer Drug Resistance in Three-Dimensional Primary Culture of Tumor Microenvironment. (2016)
  • 著者名/発表者名: Tatsuya Usui, Masashi Sakurai, Shuhei Enjoji, Hideyoshi Kawasaki, Koji Umata, Takashi Ohama, Nobuyuki Fujiwara, Ryotaro Yabe, Shunya Tsuji, Hideyuki Yamawaki, Shoichi Hazama, Hiroko Takenouchi, Masao Nakajima, Ryouichi Tsunedomi, Nobuaki Suzuki, Hiroaki Nagano, Koichi Sato.
  • 雑誌名: Stem Cells International 巻: 2016 ページ: 7053872
  • DOI: 10.1155/2016/7053872
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 大腸癌ワクチン療法におけるmiR125b-1, miR-378aの治療効果予測マーカーとしての有用性 ~Laser capture microdissection法による癌細胞・間質細胞分離の応用~ (2016)
  • 著者名/発表者名: 田中 宏典、硲 彰一、松井 洋人、徳光 幸生、兼清 信介、友近 忍、飯田 通久、恒富 亮一、徳久 善弘、坂本 和彦、鈴木 伸明、武田 茂、上野 富雄、山本 茂、吉野 茂文、藤田 浩司、黒田 雅彦、奥野 清隆、河上 裕、永野 浩昭
  • 学会等名: 第29回日本バイオセラピィ学会学術集会総会
  • 発表場所: 久留米シティプラザ (福岡)
  • 年月日: 2016-12-02 – 2016-12-02
• [学会発表] 肝細胞癌 (HCC) に対する術後補助療法としてのHSP70-mRNA導入樹状細胞療法I/II相試験 (2016)
  • 著者名/発表者名: 松井 洋人、硲 彰一、中島 正夫、松隈聰、井上 由佳、兼清 信介、徳光 幸生、新藤 芳太郎、恒富 亮一、友近 忍、飯田 通久、徳久 善弘、坂本 和彦、鈴木 伸明、武田 茂、山本 滋、上野 富雄、吉野 茂文、永野 浩昭
  • 学会等名: 第29回日本バイオセラピィ学会学術集会総会
  • 発表場所: 久留米シティプラザ (福岡)
  • 年月日: 2016-12-01 – 2016-12-01
• [学会発表] Overexpression of miR221/222 in cancer stroma are associated with malignant potentials in colorectal cancer (2016)
  • 著者名/発表者名: Michihisa Iida, Shoichi Hazama, Ryoichi Tsunedomi, Shigeru Takeda, Tomio Ueno, Shigeru Yamamoto, Shigefumi Yoshino, Hiroaki Nagano
  • 学会等名: 第75回日本癌学会学術総会
  • 発表場所: パシフィコ横浜 (神奈川)
  • 年月日: 2016-10-08 – 2016-10-08
• [学会発表] Calreticulin highly expressed in pancreatic cancer stem-like cells is a prognostic factor for pancreatic cancer (2016)
  • 著者名/発表者名: Satoshi Matsukuma, Kiyoshi Yoshimura, Tomio Ueno, Atsunori Oga, Moeko Inoue, Atsuo Kuramasu, Masanori Fuse, Ryoichi Tsunedomi, Hidetoshi Eguchi, Hiroto Matsui, Shigefumi Yoshino, Shoichi Hazama, Hiroaki Nagano
  • 学会等名: 第75回日本癌学会学術総会
  • 発表場所: パシフィコ横浜 (神奈川)
  • 年月日: 2016-10-07 – 2016-10-07
• [学会発表] Metastatic potentials and expressions of CD44 isoforms in hepatocellular carcinoma stem-like sphere cells (2016)
  • 著者名/発表者名: Ryouichi Tsunedomi, Satoshi Matsukuma, Shinsuke Kanekiyo, Kiyoshi Yoshimura, Nobuaki Suzuki, Sigeru Takeda, Tomio Ueno, Shigefumi Yoshino, Shoichi Hazama, Hiroaki Nagano
  • 学会等名: 第75回日本癌学会学術総会
  • 発表場所: パシフィコ横浜 (神奈川)
  • 年月日: 2016-10-06 – 2016-10-06
• [学会発表] 癌間質におけるmiR221およびmiR222過剰発現は大腸癌の悪性度と相関する (2016)
  • 著者名/発表者名: 飯田 通久、恒富 亮一、田中 宏典、兼清 信介、徳久 善弘、鈴木 伸明、武田 茂、上野 富雄、硲 彰一、吉野 茂文、永野 浩昭
  • 学会等名: 第27回日本消化器癌発生学会総会
  • 発表場所: 城山観光ホテル (鹿児島)
  • 年月日: 2016-09-16 – 2016-09-16
• [学会発表] 肝転移能亢進を示す癌幹細胞様細胞におけるCD44 isoformsの発現 (2016)
  • 著者名/発表者名: 恒富 亮一、松隈 聰、坂本 和彦、徳久 善弘、徳光 幸生、飯田 通久、鈴木 伸明、武田 茂、上野 富雄、吉野 茂文、硲 彰一、永野 浩昭
  • 学会等名: 第27回日本消化器癌発生学会総会
  • 発表場所: 城山観光ホテル (鹿児島)
  • 年月日: 2016-09-15 – 2016-09-15
• [学会発表] 膵癌幹細胞様細胞に高発現する分子の同定と同分子の臨床的意義に関する検討 (2016)
  • 著者名/発表者名: 松隈 聰、吉村 清、小賀 厚徳、井上 萌子、倉増 敦朗、布施 雅規、渡邊裕策、恒富 亮一、長岡 彗、江口 英利、松井 洋人、徳光 幸生、徳久 善弘、坂本 和彦、近藤 智子、上野 富雄、吉野 茂文、硲 彰一、伊藤 浩史、永野 浩昭
  • 学会等名: 第27回日本消化器癌発生学会総会
  • 発表場所: 城山観光ホテル (鹿児島)
  • 年月日: 2016-09-15 – 2016-09-15