研究課題/領域番号 |
16K10579
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
北東 大督 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70526821)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大腸癌肝転移 / HVEM / 腫瘍免疫 / 癌免疫療法 |
研究実績の概要 |
近年,新たな癌治療戦略として免疫療法が注目されており,NK細胞などの受動免疫療法と,腫瘍抗原ペプチド投与などの能動免疫療法が行なわれているが治療効果が十分とは言い難い。新たな免疫療法のターゲットとしてB7/CTLA-4やPD-L/PD-1などのT細胞不活化経路があげられる。T細胞不活化経路は免疫応答の終息,恒常性の維持,過剰免疫の抑制など生体にとって極めて重要な機能を有している反面、腫瘍の免疫回避機構との関連が確認されている。抗PD-1抗体による悪性黒色腫、腎癌などへの治療はすでに臨床応用されおり、他癌腫の臨床試験も行われている。 応募者らはこれまでに腫瘍の免疫回避機構および宿主の獲得免疫機構の包括的解明のなかで、T細胞不活化経路の重要性を見いだし,腫瘍における同経路の臨床的意義を明らかにしてきた.近年新たなT細胞不活化経路としてHVEM/BTLA,CD160経路が見いだされ.応募者らはヒト食道癌、肝細胞癌、大腸癌において腫瘍のHVEM高発現が独立した予後不良因子であることを発見し、HVEMによる腫瘍の免疫回避機構の機序についても報告した
本年度は大腸癌肝転移データベースの作成、及び大腸癌肝転移の切除標本を用いて腫瘍のHVEM発現、及び予後、再発形式との比較検討を行った。データベースは完成し、それをもとに大腸癌治療成績について検討し、英文論文を作成、すでにpublishされている。また、大腸癌肝転移のパラフィンブロックの免疫染色を行い、HVEMの強発現が予後と逆相関することも確認した。今後はさらに腫瘍内浸潤リンパ球との関連の解析、新鮮凍結標本を用いたmRNAレベルでの解析を行い、大腸癌肝転移のおけるHVEM発現が予後不良と関連する病態について解明していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、パラフィンブロックを用いた免疫染色は完了した。当初の予想通り、HVEMが強発現している大腸癌肝転移は予後が有意に不良であった。また、大腸癌肝転移のデータベースが完成した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はHVEM発現と他の臨床病理学的因子との関連、及び腫瘍内浸潤リンパ球との関連について検討する予定である。予想通り、HVEMが腫瘍免疫の制御に関わっていれば、in vitroでの実験を開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
既に支出した金額で本年度の研究が行えたため
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次年度使用額の使用計画 |
来年度の研究費と合わせて使用する予定である
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