研究課題
4-methylumberlliferone(MU)によるヒアルロン酸(HA)合成抑制作用が、膵癌の増殖ならびに進展、抗癌剤の作用増強効果、免疫機能に与える影響を検討する目的で、以下の主な検討項目を設定した。1) MU投与により膵癌組織や膵癌細胞への抗癌剤移行がどのように変化するか、2)膵癌間質の減少に伴い免疫担当細胞による腫瘍制御が向上するか、3)HAの減少により他の間質構成要素(線維芽細胞などの細胞構成要素およびコラーゲンなどの非細胞性構成要素)がどのように変化するか、4) HAにリガンドを有する癌幹細胞マーカーであるCD44を介した細胞シグナル伝達がどのように変化するか、である。昨年度からの継続で、健常成人ドナーから採取したγδT cellを用いてMU投与によってHA合成が抑制された結果として、免疫担当細胞が膵癌細胞に対して細胞障害性が増強されるかどうかの検討を、膵癌細胞株を用いたin vitro実験ならびにnudeマウスに膵癌細胞株を移植したin vitro実験によって行なった。MUの投与により再現性を持ってin vitro(膵癌細胞中)ならびにin vivo(移植腫瘍組織中)のHAは減少し、in vitro実験では組織中へのγδT cellの移行増加とともに、膵癌細胞への障害性が確認された。また、同時にin vitro、in vivo実験での膵癌細胞中の抗癌剤濃度の上昇も確認された。以上より、MUによる抗癌剤作用の増強効果は抗癌剤の細胞移行に伴う機序とともに、免疫細胞による細胞障害性機構が関与することが明らかとなった。なお、抗癌剤の検討は5-FUに止まり、Gemcitabineおよびnab-paclitaxelの検討および、CD44との関連検討には至らなかった。
4: 遅れている
当初予定した研究段階は以下のごとくである。1)各種膵癌細胞株を用いた、MUによるHA合成抑制の確認試験、2)組織レベルでのMUによるHA合成抑制の確認試験、3)MU投与下の抗癌剤の膵癌細胞内移行に関する定量試験、4)HA減少時の細胞障害性リンパ球の組織内移行の確認、5)gemcitabine, nab-paclitaxelとMUとの併用効果による間質減少と細胞障害性向上の検討、6)CD44を介した細胞内シグナル伝達への影響の検討、7)MU投与によるCD44発現膵癌細胞の増殖制御に関する検討。このうち1)-5)まで検討できたが、6)7)に到達できなかったため、1年間の延長を申請した。
研究メンバーのエフォートの変更に伴い、研究遅延が生じたことから、研究分担者の役割を見直し、上記、5)gemcitabine, nab-paclitaxelとMUとの併用効果による間質減少と細胞障害性向上の検討、6)CD44を介した細胞内シグナル伝達への影響の検討、7)MU投与によるCD44発現膵癌細胞の増殖制御に関する検討、の加速を図ることとした。
研究遅延が生じたことから、当初予定されていたもののまだ研究が終了していない 1)gemcitabine, nab-paclitaxelとMUとの併用効果による間質減少と細胞障害性向上の検討、2)CD44を介した細胞内シグナル伝達への影響の検討、3)MU投与によるCD44発現膵癌細胞の増殖制御に関する検討、に関する研究経費を次年度に計上する。
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