研究課題
膵癌の間質組織には膵星細胞が存在し、膵癌細胞の分泌する成長因子で活性化して膵癌細胞の増殖、遊走、転移を促す。癌細胞-膵星細胞クロストークを捉えることにより、膵癌オーダーメイド治療戦略を確立することを目的とした。手術切除標本を用いて、膵星細胞の初代培養を行い、3系統の初代培養を樹立した。樹立した星細胞を癌細胞とともに、免疫不全マウスに共移植したモデルを作成したが、初代培養膵星細胞では、生育条件が不死化細胞と異なり、細胞増殖にばらつきがあり、再現性のある実験の反復が困難であった。そこで、手術時に採取された膵癌切除標本のホルマリン固定標本から、切片を作成し、顕微鏡的に癌細胞・癌関連膵星細胞を分離採取して、液体クロマトグラトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)を行った。LC-MS/MS測定の結果、間質で1067種類、癌細胞で2938種類、合計で3054種類のタンパク質を同定した。同定したタンパク質を、スペクトラルカウント法:存在比(Abundance ratio)及びG-検定により、間質及び癌細胞にで、それぞれリンパ節転移陽性群と転移陰性群の群間比較を行った。全体のうち5サンプル中3サンプル以上で発現を認め、存在比-1未満もしくは、存在比1以上かつG-testにてp値0.05未満を満たす条件でタンパク質を限定した。その結果、間質で67種類、癌細胞で205種類までの候補タンパク質の絞り込みが可能であった。
2: おおむね順調に進展している
初代培養膵星細胞では、細胞増殖にばらつきがあり、再現性のある実験の反復が困難であったため、方法をホルマリン固定標本からの癌細胞・癌関連膵星細胞を分離・液体クロマトグラトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)に修正したことで、進捗している。
候補タンパク質を最終的に10種類程度に選定する予定である。LC-MS/MS測定を行なった10症例で免疫組織化学を行いタンパク質発現の局在を確認したのち、多数の膵癌切除症例(術前治療介入未施行膵癌症例)で免疫組織化学を行い、臨床病理学的因子との関係を検証する。
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癌と化学療法
巻: 44 ページ: 1241-1244