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2017 年度 実施状況報告書

血中エクソソームを利用した膵癌タイプ別分類に基づくテーラーメード治療の確立

研究課題

研究課題/領域番号 16K10590
研究機関名古屋大学

研究代表者

山田 豪  名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (30467287)

研究分担者 高見 秀樹  名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40723028)
末永 雅也  名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (50801627)
藤井 努  富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (60566967)
小寺 泰弘  名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10345879)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード膵癌 / EMT / 術前診断
研究実績の概要

われわれは「上皮間葉転換(EMT)」が膵癌を含むさまざまな消化器癌において癌の浸潤・転移のメカニズムとして重要であることを報告してきた。一方、日常臨床の経験から、膵癌は「局所進展タイプ」と「遠隔転移タイプ」に大きく二分されると考えている。したがって、各々のタイプに応じた治療法の確立が求められることから、EMTを膵癌のタイプ別分類に利用することを着想した。
また、消化管癌と異なり、術前に腫瘍組織を採取することが一般的ではない膵癌においては、「血中癌細胞由来エクソソーム」を利用したリキッドバイオプシーにより術前診断を行うことが有用である。本研究では非侵襲的かつ理想的なリキッドバイオプシーにより膵癌の術前タイプ別分類法を確立し、集学的治療をテーラーメード化し、治療成績を向上させることを目的としている。
本研究はin vitroとin vivoで得られた結果を膵癌切除患者の血液サンプルにて検証することとした。初年度は、膵癌細胞株の培養上清からエクソソームを抽出・精製し、網羅的解析により膵癌をEMTの見地から「局所進展タイプ」と「遠隔転移タイプ」に分類することが可能なmiRNAのリストアップを行った。昨年度は、リストアップした候補miRNAをパブリックデータベース及び、膵癌切除検体から抽出したRNAにより発現解析を行った。最終的には、膵腫瘍切除患者の血液サンプルにてエクソソーム内のmiRNAやタンパクを測定し、群間比較、臨床病理学的因子、予後、再発形式との相関、悪性化への関与を解析する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでのわれわれの研究報告より、膵癌細胞株においてはEMTに関する上皮系あるいは間葉系細胞のステータスが既に判明しているため(Yamada S, Fuchs BC. Surgery 2013)、本研究においては上皮系細胞株と間葉系細胞株として典型的な膵癌細胞株をそれぞれ2種類ずつ使用し、研究を開始した。これらの膵癌細胞株を培養し、培養上清からエクソソームを超遠心法により回収した。その後、表面マーカーに対するビーズを用いたフローサイトメトリーによりエクソソームの精製を行った。この段階において、正確にエクソソームが抽出されているか否かを確認するため、電子顕微鏡にて抽出したエクソソームを視覚的にも確認した。
その後、抽出したエクソソームにおいて、miRNAの発現を網羅的に解析した。その結果、上皮系細胞株と間葉系細胞株において有意に高発現もしくは低発現しているmiRNAをリストアップし、パブリックデータベースを用いてそれぞれの発現解析を行った。また、教室の膵癌切除検体からRNAを抽出し、同様に発現解析を行い、臨床病理学的因子や予後との相関を調査した。しかしながら、膵癌切除検体からのRNA抽出において、当初の予定よりも時間を要したためやや遅れている。

今後の研究の推進方策

これまでの研究結果をもとに、最終年度は臨床検体を用いた測定・解析を完遂する予定である。教室で切除を行った2011年から2015年までの ① 膵癌患者、② IPMN患者、③ その他膵腫瘍患者および④健常者の血液からエクソソームを抽出・精製し、先の「miRNA」の発現を測定する。4群間の比較だけでなく、膵癌患者においては臨床病理学的因子、予後、再発形式(局所再発、肝転移、腹膜播種、肺転移)との相関、その他の膵腫瘍においては悪性化への関与を解析する。
時間的猶予があれば、動物実験でも確認する予定である。ヌードマウスに対して、EMTにおける上皮系と間葉系膵癌細胞株それぞれの皮下腫瘍モデルを作成し、尾静脈より経時的に血液採取を行う。採取した血液からエクソソームを抽出・精製し、先に同定した「miRNA」の発現をそれぞれ測定し、比較検討を行う。これにより、間葉系細胞株を用いたマウスモデルにおいては、上皮系細胞株のマウスモデルと比較して「miRNA」が血中エクソソーム内に有意に高発現していることを立証する。さらにまた、上皮系細胞株によるマウスモデルに対して、間葉系細胞株のマウスモデルの血中から抽出・精製したエクソソームを尾静脈に同時注射し、皮下腫瘍の増大だけでなく、転移・浸潤能についても機能解析を行い、エクソソームあるいは「miRNA」による上皮系腫瘍の間葉化について検証する。

次年度使用額が生じた理由

エクソソーム抽出と網羅的解析においては、順調に実施することができた。特に、エクソソーム抽出は超遠心法により施行できたため、コストを低減させることができた。しかしながら、膵癌切除検体からのRNA抽出に時間を要してしまい、血液サンプルのエクソソームからmiRNAを測定することができていない。また、本研究結果は、国内外の各種学会・論文などへ研究成果を発表予定であるため、そのための旅費、論文作成及び投稿のために使用を計画している。

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公開日: 2018-12-17  

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