研究課題
われわれは「上皮間葉転換(EMT)」が膵癌を含むさまざまな消化器癌において癌の浸潤・転移のメカニズムとして重要であることを報告してきた。一方、日常臨床の経験から、膵癌は「局所進展タイプ」と「遠隔転移タイプ」に大きく二分されると考えている。したがって、各々のタイプに応じた治療法の確立が求められることから、EMTを膵癌のタイプ別分類に利用することを着想した。また、消化管癌と異なり、術前に腫瘍組織を採取することが一般的ではない膵癌においては、「血中癌細胞由来エクソソーム」を利用したリキッドバイオプシーにより術前診断を行うことが有用である。本研究では非侵襲的かつ理想的なリキッドバイオプシーにより膵癌の術前タイプ別分類法を確立し、集学的治療をテーラーメード化し、治療成績を向上させることを目的としている。本研究はin vitroとin vivoで得られた結果を膵癌切除患者の血液サンプルにて検証することとした。膵癌細胞株の培養上清から超遠心法による分離技術を用いてエクソソームを抽出し、電子顕微鏡およびnano tracking analysis (NTA)で確認した。血漿中にはマイクロ小胞やアポトーシス小体など、様々な粒径の物質が含まれているが、密度勾配法を用いた超遠心法により高純度なエクソソームの抽出が可能となった。網羅的解析により膵癌をEMTの見地から「局所進展タイプ」と「遠隔転移タイプ」に分類することが可能なmiRNAのリストアップを行った。リストアップした候補miRNAをパブリックデータベース及び、膵癌切除検体から抽出したRNAにより発現解析を行い、その結果、有力なmiRNAが候補としてピックアップできた。膵腫瘍切除患者の血液検体におけるエクソソームの抽出につきアフィニティー法を用い、総RNAを抽出してmiRNAの解析を行うことに成功した。ピックアップしたmiRNAの発現解析、臨床病理学的因子・予後との解析を行い、論文投稿を行なった。
すべて 2019
すべて 学会発表 (1件)