研究課題
当科における肝内胆管癌77例の手術検体を用いてCD90の発現を原発巣及びリンパ節転移巣に対して免疫組織学的染色を行い,臨床病理学的所見や予後との関連について検証した.さらにヒト肝内胆管癌細胞株を用いて,フローサイトメトリーで単離したCD90陽性/陰性細胞の特性解析を行った.肝内胆管癌原発巣においてCD90の発現は77例中25例でみられた.CD90発現はリンパ節転移との有意な相関関係が認められた.さらに癌転移リンパ節についてもCD90で免疫染色を行ったところ,原発巣と転移リンパ節との間にCD90発現に関して相関性が見られた.生存分析ではCD90陽性症例は無再発生存期間,全生存期間ともに有意に短く, CD90発現は独立予後因子の一つであった.2つのヒト肝内胆管癌の細胞株を用いて解析したところ,分離したCD90陽性細胞は陰性細胞と比較し有意に高い遊走能を示した.また転移に関わる細胞機構とされる上皮間葉転換 (EMT) に関する遺伝子発現を定量PCRで確認したところ,CXCR4とMMP7の高発現を示した.CD90発現のノックダウンによりこれらの発現は低下した.CXCR4とMMP7はWnt/b-catenin signaling pathwayの標的遺伝子とされている.CD90陽性細胞で有意にWnt/b-catenin signaling活性が上昇していた.一方Wnt/b-catenin阻害薬をCD90陽性細胞に作用させると,CXCR4とMMP7の発現が低下した.肝内胆管癌においてCD90発現細胞はin vitroではWnt/b-catenin signalingを介してEMT関連遺伝子を高発現し高い転移能を有していた.その結果in vivoではリンパ節転移のリスクが高くなり予後不良に関与すると考えられた.
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Journal of Surgical Oncology
巻: 118 ページ: 664~674
10.1002/jso.25192