研究課題/領域番号 |
16K10594
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
竹永 啓三 島根大学, 医学部, 准教授 (80260256)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アディポネクチン受容体 / アゴニスト / 細胞死 / 前2型糖尿病 |
研究実績の概要 |
抗糖尿病低分子化合物として発見されたアディポネクチン受容体アゴニストAdipoRonがヒト膵癌細胞株の細胞死を惹起し、動物実験でも抗腫瘍効果を示すことを見出した。この知見をさらに発展させるために、手術で摘出された膵臓癌から膵臓癌初代培養細胞を細胞塊(スフェロイド)として得て、AdipoRonの効果を検討した。その結果、組織の線維化が顕著な症例が多く成功例が少ないが、手術検体8例のうち4例で初代培養細胞を得ることができた。まず、これらの初代培養細胞におけるアディポネクチン受容体(AdipoR1とAdipoR2)の発現をqRT-PCRで調べたところ、いずれも発現されていることが判った。そこで、AdipoRonを作用させ、細胞死誘導をFITC-EpiCAM陽性細胞中のPI陽性細胞の割合で算出した。その結果、全例において細胞死の誘導が観察された。この細胞死にミトコンドリア由来活性酸素が関与するかどうかを検討するために、AdipoRonとミトコンドリア活性酸素のスカベンジャーであるMitoTEMPOを同時に作用させたところ細胞死が減弱した。このことから、ミトコンドリア由来ROSの細胞死への関与が示唆された。この時の細胞死の様式は、細胞形態学的にはネクローシスであることが推察された。 一方、次年度の研究計画で使用予定であるルシフェラーゼ発現マウス膵臓癌細胞Panc02-Lucを、Panc02細胞にpHIV-Luc-ZsGreenをレンチウイルで感染させることで樹立した。この細胞をC57BL/6マウスの皮下に移植し、腫瘍形成後にIVIS in vivo imagingを行い、腫瘍増殖経過を観察できることを確認した。 さらに、次年度に行う予定である前2型糖尿病マウスモデルB6J-DIOの作出のために、60 Kcal%の高脂肪食とコントロールとしての通常食の給餌を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵臓癌初代培養細胞にAdipoRonを作用させた際に、cytochrome c, AIFの細胞質への遊離あるいは核移行、AMPK, mTOR, Akt, MAKPs,NF-kappaBなどのリン酸化を調べる予定であったが、手術材料から調製できる膵臓癌細胞の数が極めて少なかったことから実施できなかったが、研究計画はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通りに、 1)膵癌細胞株におけるEMT, CSCに対するAdipoRonの効果をEMT関連遺伝子やCSCマーカー遺伝子の発現を調べることで検討する。 2)膵癌初代培養系におけるAdipoRonの増殖抑制と細胞死誘導効果の機序の検討を行う。 3)前2型糖尿病が膵癌細胞の増殖、EMTおよびstemnessに及ぼす影響を検討するために、B6J-DIOマウスの膵臓にPanc02-Luc細胞を同所移植し、in vivo imagingを行い、増殖経過をコントロールマウスと比較する。また、実験のエンドポイントとして、腫瘍組織を切り出し、組織切片におけるEMT, CSC関連マーカーの発現を検討する。 4)Panc02-Luc細胞を同所移植したB6J-DIOマウスにAdipoRonを経口投与し、前糖尿病症状や腫瘍増殖に対する影響を検討する。
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