研究課題
膵癌が予後不良な原因の一つに神経浸潤による組織学的非切除と後腹膜再発があり、膵癌の神経浸潤機序の詳細な解明が必要である。膵癌においてはオートファジーが発癌を抑制する一方で、確立された膵癌の進展を促進することが知られているが、癌微小環境下における神経細胞のオートファジーの役割は明らかでなく、神経浸潤におけるオートファジーの役割の解明を目的とし研究を開始した。前年度までは、膵間質中に多く存在する膵星細胞のオートファジーの機序に着目した研究を行ってきた。正常及びオートファジー誘導膵星細胞のRNA を抽出して、マイクロアレイによる網羅的発現解析を行ったところ、オートファジー誘導群で複数の遺伝子発現の増加が認められた。siRNAを用いて標的遺伝子発現をノックダウンした細胞では、蛍光免疫染色及びウエスタンブロッティングでLC3-IIの低下、p62の蓄積を認めており、オートファジー制御に関与していることが示唆された。また、ヒト膵癌切除標本における神経細胞の神経細胞のオートファジー活性を、LC3抗体を用いた免疫染色で評価した。神経細胞においては一般的にLC3陽性となるため、今後は染色強度での細分類や、p62等他のオートファジーマーカーでの評価を追加して検討を行う必要がある。このように正常膵星細胞においてはその活性状態とオートファジーの関連性は解明されつつあるが、一方で膵癌に隣接する神経細胞と癌細胞の癌間質作用においての詳細な研究は行えていない。今後助成期間終了後も、膵星細胞のオートファジー誘導の手法やその結果を応用して引き続き神経細胞でのオートファジーについてさらに検討を進める予定である。
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