研究課題/領域番号 |
16K10598
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂井 寛 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80611665)
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研究分担者 |
水元 一博 九州大学, 大学病院, 准教授 (90253418)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | MALDI-MSI / Energy Charge / 凍結組織アレイ / バイオマーカー探索 |
研究実績の概要 |
メタボローム解析は細胞代謝物を対象とし、疾病マーカー探索等における重要性が指摘されている。従来の質量分析法では、代謝物の抽出・濃縮が不可欠で、組織内局在情報が失われてしまうが、凍結切片にレーザーを照射し分析を行うマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析イメージング(MALDI-MSI)を用いることで、メタボローム情報を組織像上にマッピングすることが可能となった。一方、当研究室では、オルガノイドによる膵癌微小環境再現し、癌間質相互作用のメカニズム解明を進めている。本研究では、膵癌の特徴である高い浸潤能および間質の増生に特徴的な代謝産物を同定し、そのメカニズムを明らかにすることによって、早期診断・新規治療法確立の手がかりを探ることであり、 膵癌に特徴的なdesmoplasiaと呼ばれる間質成分増生を含む、間質リモデリングを伴う、代謝物の変化を分析することである。本年度は、基礎的検討として膵癌、膵炎、正常膵組織(各5例)を用いたメタボロームマッピングを行い、一部サンプルに対しては、空間分析密度を高めた高解像度マッピングをおこなった。エネルギー状態の指標として、Energy charge(EC= (ATP + 1/2 ADP) / (ATP + ADP + AMP))を用いて画像の再構築をおこない、腫瘍組織において、ECが高い傾向がみられることが確認できた。一方で、以前検討を行った乳腺組織と異なり、正常膵組織サンプルは中心部で 低いECを示していた。同部位ではサンプル辺縁の膵組織よりも高AMPおよび低ATPシグナル を呈しており、サンプル採取時の組織内代謝産物の経時変化を含めた検討が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト由来サンプル分析と平行して、マトリゲルを用いた培養細胞の分析を試みているが、ヒト組織と比較して、マトリゲルは非常に軟弱で、未固定での取り扱いが難しいだけでなく、薄切時にゲル構造が壊れてしまう問題が明らかとなった。 作業手順および分析方法の最適化が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
スフェロイドの作製手技は確立しているので、作業手順および分析方法の最適化について検討し、分析を行う。 ヒト組織を用いた分析についても、マッピングデータから得られた情報の解析を進めるとともに、サンプルを増やして データの蓄積をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
マトリゲルを用いた培養細胞の分析を試みているが、作業手順および分析方法の検討が必要なため計画にやや遅れを生じているため。
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次年度使用額の使用計画 |
培養用試薬、培養用器具、抗体、解析費用など
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