研究課題
本研究の目的は、膵癌に特徴的なdesmoplasiaを含む間質リモデリングにおける代謝物の変化を分析することである。従来の質量分析法では、代謝物の抽出・濃縮が不可欠で、組織内局在情報が失われてしまうが、凍結切片にレーザーを照射し分析を行うマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析イメージング (MALDI-MSI)を用いることで、メタボローム情報を組織像上にマッピングすることが可能となった。MALDI-MSIおよび膵癌、膵炎、正常膵組織を用いた低分子代謝産物を対象としたメタボロームマッピングにおいて、腫瘍組織において、Energy charge(EC= (ATP + 1/2 ADP) / (ATP + ADP + AMP))が高い傾向がみられた。そこで膵癌微小環境再現において、より生体内を反映するとされる膵癌オルガノイドの樹立を行い、癌関連線維芽細胞との共培養を基とした解析を進めた。しかし、コラーゲンゲルを用いた疎な共培養モデルの凍結切片を作製することは困難であり、安定した標本作製の技術を確立する必要があった。今回、オルガノイド樹立件数が計11例に増加したことに加え、これまでの共培養モデルを改良し、膵癌オルガノイドと癌関連線維芽細胞を用いた共培養スフェロイドを作製することで細胞間接着を密とし、癌周囲微小環境を崩すことなく凍結切片作製が可能となった。このモデルは免疫組織学的評価において癌関連線維芽細胞によるコラーゲン産生を含む間質リモデリングを認めており、このモデルを用いたMALDI-MSIを検討した。また、樹立したオルガノイドの手術切除標本由来の凍結膵癌組織を用いたメタボローム解析を行った。これにより、実際の組織内のメタボローム解析結果と、各共培養スフェロイドモデルの用いたMALDI-MSIを照合および検討が可能となった。
すべて 2018
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Anticancer Research
巻: 38 ページ: 4267~4272
10.21873/anticanres.12723