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2017 年度 実施状況報告書

肝転移過程における肝内血管内皮細胞の新たな役割-防御から促進へ-

研究課題

研究課題/領域番号 16K10599
研究機関九州大学

研究代表者

前山 良  九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10611668)

研究分担者 藤田 逸人  九州大学, 医学研究院, 助教 (40611281)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード膵癌 / 血管内皮細胞 / 肝転移 / leading cell
研究実績の概要

本研究の目的は膵癌肝転移形成における肝内局所の血管内皮細胞の機能を明らかにし、血管内皮細胞をターゲットとした新たな膵癌肝転移の制御法を開発することである。
現在までに我々は腹膜中皮細胞や膵癌間質の主な細胞成分である膵星細胞が癌の浸潤を先導するleading cellとして機能することを報告してきた。血管内皮細胞は血管新生の際に細胞外基質を分解し間質に遊走することから腹膜中皮細胞や膵星細胞と同様にleading cellとして機能するのではないかと考えた。
そこでヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をレンチウイルスベクターを用いてhTART、SV40を導入することで不死化した。不死化した血管内皮細胞を用いて膵癌細胞との相互作用を解析した。トランスウェルチャンバーを用いたmigration assayでは膵癌細胞との共培養では膵癌細胞の遊走は亢進したことから血管内皮細胞が膵癌の遊走能を増強する可能性が示唆された。血管内皮細胞のleading cellとしての作用に関しては血管内皮細胞と膵癌細胞をゲル内で3D培養することにより血管内皮細胞が膵癌細胞を先導するか様々な条件下で検討を行っている。また、当研究室では通常の3D培養モデルよりもより生体内を反映すると考えられているオルガノイドの樹立に成功している。これまでにこの膵癌オルガノイドモデルで癌関連線維芽細胞と共培養することによる変化を解析してきた。このモデルに血管内皮細胞を加えることで膵癌細胞との相互作用をより生体内に近い環境で観察できると考え、現在解析を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

我々は既に多くの膵癌細胞株を入手しており、血管内皮細胞に関してはヒト臍帯静脈内皮細胞を入手し、不死化および蛍光タンパクを導入することにより安定的に実験を行うことができる環境を構築した。実際にこれらの細胞を共培養することで血管内皮細胞が膵癌細胞の遊走能を亢進させることを見出した。
一方で血管内皮細胞のleading cellとしての機能に関しては現在条件検討中であり、さらに膵癌オルガノイドモデルを用いたより生体内に近い環境での解析を行っている。

今後の研究の推進方策

膵癌細胞、不死化した血管内皮細胞を用いて血管内皮細胞が膵癌細胞を先導する様子を観察し、その機序に関与するメカニズムを明らかにする。また、当研究室で作成した膵癌オルガノイドモデルを用いてより生体内に近い環境で膵癌細胞と血管内皮細胞の相互作用を検討する。

次年度使用額が生じた理由

研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。
次年度は研究用試薬、器材、抗体などの消耗品、遺伝子改変マウスの作成などに使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Pancreatic stellate cells reorganize matrix components and lead pancreatic cancer invasion via the function of Endo1802018

    • 著者名/発表者名
      Koikawa K, Ohuchida K, Takesue S, Ando Y, Kibe S, Nakayama H, Endo S, Abe T, Okumura T, Horioka K, Sada M, Iwamoto C, Moriyama T, Nakata K, Miyasaka Y, Ohuchida R, Manabe T, Ohtsuka T, Nagai E, Mizumoto K, Hashizume M, Nakamura M.
    • 雑誌名

      Cancer Letters

      巻: 412 ページ: 143~154

    • DOI

      10.1016/j.canlet.2017.10.010

    • 査読あり
  • [学会発表] マウスモデルを用いた膵癌微小転移形成機序の解析2017

    • 著者名/発表者名
      武居晋、大内田研宙、安藤陽平、岐部晋、中山宏道、阿部俊也、肥川和寛、遠藤翔、厳子龍、奥村隆志、仲田興平、森山大樹、宮坂義浩、真鍋達也、大塚隆生、永井英司、水元一博、中村雅史
    • 学会等名
      第117回日本外科学会定期学術集会
  • [学会発表] 膵癌におけるTPO-CD110-ERK-MYCシグナル経路の生物学的意義の解析2017

    • 著者名/発表者名
      Zilong Yan,大内田研宙、奥村隆志、遠藤翔、阿部俊也、肥川和寛、武居晋、中山宏道、安藤陽平、岐部晋、仲田興平、宮坂義浩、森山大樹、大塚隆生、永井英司、水元一博、中村雅史
    • 学会等名
      第117回日本外科学会定期学術集会
  • [学会発表] 膵癌における肝・肺転移形成機序の相違に関する検討2017

    • 著者名/発表者名
      武居晋、鄭彪、大内田研宙、森泰寿、仲田興平、宮坂義浩、大塚隆生、永井英司、中村雅史
    • 学会等名
      第72回日本消化器外科学会総会

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公開日: 2018-12-17  

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