研究課題
本研究の目的は膵癌肝転移形成における肝内局所の血管内皮細胞の機能を明らかにし、血管内皮細胞をターゲットとした新たな膵癌肝転移の制御法を開発することである。我々は現在までにマウスモデルやゲルを用いた3D培養モデルを用いて膵星細胞や腹膜中皮細胞が癌細胞を先導するleading cellとして機能することを報告しており、本研究では新たに血管内皮細胞に着目し、その機能の解析を行った。コラーゲンゲルを用いた3D培養モデルにおいては血管内皮細胞であるヒト臍帯静脈内皮細胞が膵癌細胞の浸潤を先導する現象はみられなかったが、トランスウェルチャンバー内にヒト臍帯静脈内皮細胞を単層培養したモデルにおいて、肝臓で強発現しているトロンボエチンを添加することで癌細胞がヒト臍帯静脈内皮細胞の層を通過しやすくなり、その効果は癌細胞のCD110の発現に依存していることが確認できた。このことから、膵癌の肝転移形成において膵癌細胞が発現するCD110が肝臓のTPOと相互作用することにより膵癌細胞の血管外遊走を促進している可能性が示唆された。また、マウスの脾臓に膵癌細胞を注入する肝転移モデルマウスにおいても膵癌細胞のCD110をノックダウンすることにより肝転移形成が抑制され、生体内においても膵癌細胞が発現するCD110が肝臓の微小環境中のTPOとの相互作用により肝転移形成を促進することが示唆された。さらに、CD110を発現する膵癌細胞においてTPOがERK1/2、c-Mycをリン酸化することで膵癌細胞の増殖を促進することを見出した。
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J Cancer Res Clin Oncol
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10.1007/s00432-019-02860-z