研究課題
本研究の目的は、様々なタンパク質や核酸を含む直径100nm程度の小胞で細胞間の情報伝達を担うエクソゾームに着目し、膵前癌病変周囲の間質細胞に由来するエクソゾームを同定・解析して新たな早期診断バイオマーカーを開発することである。膵癌は外科切除不能な段階で診断されることが多いため、早期診断のためには膵癌発症の危険因子ごとに発癌・進展に至る詳細なメカニズムを解明し、精度が高く汎用性のあるスクリーニング検査を開発することが求められる。本年度はヒト膵癌術前症例から採取した膵液中エクソゾームに含まれるmiRNA(ex-miRs)のマイクロアレイ解析を行い、ex-miR320a、320b、361、145、29cの5種をバイオマーカー候補として同定した。バリデーションを行ったところ、すべてのex-miRsは慢性膵炎群と比較して膵癌群で有意に高発現していた(p<0.0001、p<0.0001、p<0.0001、p<0.0001、p=0.0009)。AUCはそれぞれ0.923、0.923、0.916、0.930、0.852であり、血清CA19-9のAUC(0.680)と比較の比較において、ex-miR320a、320b、361、145は血清CA19-9よりも有意に診断能が優れていたが(p<0.01)、ex-miR29cとは有意差を認めなかった(p=0.15)。また、ex-miRsの正診率はそれぞれ90%、90%、85%、90%、76%であり、膵液細胞診の71%よりも優れていることが確認できた。エクソゾームの由来細胞について現時点では同定できておらず、また、前癌病変の間質細胞からのエクソゾームの採取、解析は今後の検討課題であるが、本研究において膵液中のex-miRsが膵癌診断のバイオマーカーとして有用である可能性を示すことができた。
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Ann Surg Oncol
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10.1245/s10434-019-07269-z