研究課題/領域番号 |
16K10606
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
松尾 洋一 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (40381800)
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研究分担者 |
竹山 廣光 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 名誉教授 (00216946)
佐藤 崇文 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (10747257) [辞退]
齊藤 健太 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (10770240)
森本 守 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (60722569)
今藤 裕之 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 臨床研究医 (80790641)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膵癌 / 血管新生 / インスリン様成長因子 / 分子標的薬剤 |
研究実績の概要 |
膵癌は悪性度の非常に高い癌であり新たな分子標的薬剤の開発は急務である.インスリン様成長因子(IGF)-1は通常は肝臓で産生される成長ホルモンで,癌の増殖・浸潤に関与することが報告されている. 今回の研究では,IGF-1がPI3K/AKT/mTOR/NF-κBを介して炎症性サイトカインのCXCL8/IL-8の発現を制御し,膵癌血管新生を亢進することを確認することを目的としており,平成29年度までに以下の研究を行い,成果をあげている. (A)膵癌におけるIGF-1およびIGF-1R発現の検討:膵癌細胞株を用いたIGF-1R発現の検討:膵癌細胞株および正常膵管上皮細胞株のIGF-1R発現をRT-PCRおよびWestern Blotにて検討し,膵癌細胞株にIGF-1Rが発現していることを確認した.(B)IGF-1が膵癌細胞のCXCL8/IL-8産生に及ぼす影響の検討:膵癌細胞株をIGF-1で刺激し, CXCL8/IL-8のmRNAの発現変化をリアルタイムPCRで検討した.膵癌細胞株のMIA PaCa-2とSW 1990でIGF-1刺激によりCXCL8/IL-8の発現亢進を認めた.(C)IGF-1の下流シグナルの解明:PI3K/AKT/mTORシグナルがIGF-1の下流にあることをWestern Blot等で確認した. 我々はCXCL8/IL-8が膵癌血管新生の中心的役割を果たしていることを報告してきており,IGF-1がこの発現を制御していることを確認した.これはIGF-1シグナルの抑制が膵癌治療へ結びつく可能性を示唆している.今後はIGF-1の下流シグナルを検討する.動物実験でもIGF-1R inhibitorの効果を検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IGF-1が膵癌における血管新生因子のCXCL8/IL-8の産生を亢進することを確認でき,これは新しい知見である.今後はIGF-1とCXCL8/IL-8をつなぐ下流シグナルの解明の一部が確認できている.今後,このシグナルがCXCL8/IL-8の産生に関与していることを解明し,動物実験に移る予定である
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今後の研究の推進方策 |
今後はIGF-1がCXCL8/IL-8を産生することにより血管新生を亢進することをin vitro angiogenesis assayで検討する.そののち,ヌードマウスを用いたin vivo実験でIGF-1R inhibitorの抗腫瘍効果を検討する. (C)IGF-1の下流シグナルの解明:以下のシグナルをWestern Blot等で検討する.:(C-2) IGF-1のNF-κBシグナルへの関与の検討. (C-3) IGF-1によるCXCL8/IL-8発現亢進に関与するシグナルの検討 (D)IGF-1が膵癌血管新生能を亢進し,CXCL8/IL-8が関与することを検討する:血管内皮細胞(VEC), 線維芽細胞(FB),および膵癌細胞をdouble chamber法にて2週間共培養し,VECのtube formation の変化を比較検討する.さらにCXCR2 inhibitor(CXCR8/IL-8のレセプター中和抗体)の処理を行い,VECの管腔形成能に及ぼす影響を検討する.これらのin vitro assay手技は確立している. (E)IGF-1受容体の制御が腫瘍血管新生を抑制し効腫瘍効果をもつことをin vivoで検討し,IGF-1R inhibitorの抗腫瘍効果を検討する.
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