研究実績の概要 |
慶應義塾大学病院で1990年以降にR0, R1切除を行った胆道癌のうち、まず肝内胆管癌の56例を対象として後ろ向きコホート研究を行った。これらの症例では肝十二指腸間膜,膵頭周囲および総肝動脈沿いのリンパ節郭清が原則とされていた。なお左肝病変では胃小弯沿いと左胃動脈根部の郭清を追加.まず術後3年生存に寄与する因子を明らかにし,さらにリンパ節転移陽性群に限って予後を調べた。 男性:女性=36:20、年齢中央値70 (39-83) 歳、腫瘍径4.5 (1.5-16.0) cm、腫瘤形成型およびその優越型42例 (75%)、多発腫瘍14例 (25%)、2区域以上の肝切除40例 (71%)、R0切除47例 (84%)。リンパ節転移は19例 (34%) に生じ、うち左肝病変17例中8例に胃小弯または左胃動脈根部リンパ節転移あり。在院死4例を除く52例の3年生存率は66%、3年無再発生存率33% (観察期間中央値36ヶ月)。多変量解析ではリンパ節転移陽性 (HR 6.3, 95% CI 1.9-21.7, P = 0.003) とR1切除 (HR 7.8, 95% CI 1.6-38.3, P = 0.01) が3年生存の独立した予後不良因子であった。3年無再発生存については上記2因子に加え多発腫瘍が予後不良(P < 0.05)。転移陽性リンパ節4個以上の症例は1年無再発生存例ゼロで転移個数1-3までの症例と比し有意に予後不良(P=0.005)。 シヌクレインガンマ(SNCG)発現を確認すべく免疫染色の準備を進めているほか、リンパ節転移部位により予後が異なる可能性が高いことからさらに詳細に予後を分析中である。
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