研究課題/領域番号 |
16K10612
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
有賀 淳 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40221056)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胆道癌 / 免疫チェックポイント / 遺伝子変異 / ネオアンチゲン / 免疫療法 / エクソームシーケンス / 免疫プロファイリング |
研究実績の概要 |
胆道癌は予後が極めて不良な疾患であり、有効な治療法の開発が必須である。近年、生体内のT細胞抗腫瘍免疫応答を強く抑制する免疫チェックポイント分子が発見され、そのシグナルをブロックする抗体医薬が開発された。すでにメラノーマ、肺癌、腎癌、胃癌などで臨床効果が確認され薬事承認されており、一定の患者において著明な臨床効果を認めているが、胆道癌に対する開発は未だ進んでいない。生体のT細胞抗腫瘍免疫応答の発現には癌細胞における変異抗原(ネオアンチゲン)、HLA分子、PD-L1分子などの存在が重要であり、免疫治療の臨床効果は癌組織への腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の高浸潤が必要とされている。今回、胆道癌における新規免疫治療の開発を目指して、胆道癌における遺伝子変異、ネオアンチゲン発現、HLA発現、PD-L1発現を解析して有機的な個々の免疫プロファイリングを試みる研究を進めている。研究開始当初は外科手術後のホルマリン固定パラフィン包埋標本(FFPE)を利用した画一的な解析を検討していたが、固定標本から抽出したDNAの量及びクオリティ等の問題により十分な解析が困難であり、サンプルを外科手術新鮮凍結組織として解析を進めている。現在までに、胆道癌組織からのDNA抽出、DNAのクオリティチェック、ライブラリ作成、テンプレート調整、次世代シーケンサーによるエクソームシーケンスの準備を整え、まとめて解析を行うためのサンプル集積を続けている。また、胆道癌の遺伝子変異データからネオアンチゲン候補を選択するためのインフォマティクスの検討を進めており、より正確なネオアンチゲン評価システムの構築を行っている。同時に胆道癌におけるHLA発現及びPD-L1発現の解析に必要な免疫組織染色用抗体を選択し、準備を整えており、染色条件を調整してまとめてのサンプル解析を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究内容にはヒト胆道癌組織の遺伝子変異解析を実施する内容が含まれるため、遺伝子研究に関する倫理委員会での承認が必要であり、また、個人情報保護法の改定や臨床研究法の設定などが重なって、予想以上の時間を要したため、全体の研究遂行がやや遅れて進行している。さらに、研究実施の承認が得られてからの研究遂行において当初外科手術標本のホルマリン固定パラフィン包埋標本(FFPE)の利用を想定して進めていたが、サンプルからのDNA抽出において量とクオリティに問題があり、良好な結果が得られなかったため、新たに手術時の新鮮癌組織を利用することとして研究を進めているため、サンプルの集積に予定より時間を要しており現在まで多少の遅れを生じて推移している。癌細胞におけるHLAとPD-L1の発現解析については検査の均一性を保つため、サンプルがまとまった時点での解析を予定しており、そのための準備を整えてサンプルを集積に努めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度まで研究用のサンプル集積が遅れており、研究全体にやや遅れが生じているため、引き続き精力的にサンプルの収集に努める。サンプル解析の準備は整っているため、次年度において、研究エフォートを十分増やして、集積されたサンプルをまとめて解析する予定である。また、研究データの解析のためのインフォマティクスの検討及び有機的免疫プロファイリングの検討をさらに進めて、追加情報として必要な解析(RNAシーケンスの導入、腫瘍組織中のTILのTCRレパトア解析など)について考察を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究内容にはヒト胆道癌組織の遺伝子変異解析を実施する内容が含まれるため、遺伝子研究に関する倫理委員会での承認が必要であり、また、個人情報保護法の改定や臨床研究法の設定などが重なって、予想以上の時間を要したため、全体の研究遂行がやや遅れて進行している。さらに、研究実施の承認が得られてからの研究遂行において当初外科手術標本のホルマリン固定パラフィン包埋標本(FFPE)の利用を想定して進めていたが、サンプルからのDNA抽出において量とクオリティに問題があり、良好な結果が得られなかったため、新たに手術時の新鮮癌組織を利用することとして研究を進めているため、サンプルの集積に予定より時間を要しており現在まで多少の遅れを生じて研究が推移している。以上の理由によりサンプル採取の遅れとサンプル解析の遅れが生じたため、本年度の使用消耗品が予定より少なく、次年度使用額が生じた。次年度使用額は次年度のサンプル解析のための消耗品に使用する予定である。
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