胆道癌は予後が極めて不良な疾患であり、有効な治療法の開発が必須である。近年、T細胞の免疫応答を強く抑制する免疫チェックポイントを阻害する抗体医薬 が開発され、癌に対する免疫応答の重要性が明らかとなった。T細胞は癌細胞の遺伝子変異由来のネオアンチゲンに強く応答する事が知られており、本研究では胆道癌における遺伝子変異を解析し、T細胞免疫応答の標的となるネオアンチゲンエピトープの同定を試みた。研究最終年度までに外科手術時にICにて同意が得られた胆道癌患者4人よりそれぞれ胆道癌部及び非癌部を4サンプルずつ、合計8サンプルを採取し凍結保存した。最終年度に各サンプルよりDNAを抽出してそれぞれのライブラリ調整及びテンプレート調整を行った後に、IonTorrentシステムの次世代シーケンサーにて全エクソームシーケンスを実施した。得られた癌組織及び非癌部組織の遺伝子解析データをIon Reporter 5.12にてtumor-normalペア解析を実施し、胆道癌組織における変異遺伝子と変異の種類及び変異部位を同定した。次に、ネオアンチゲンエピトープが結合するHLAクラスI分子としてそれぞれのサンプルのHLA-Aアリルを同定するため、シーケンスリードデータのBAMファイルをIntegrative Genomics Viewerに読み込んで可視化し、6番染色体上のHLA-A領域遺伝子配列を解読して、その塩基配列をIPD-IMG/HLAデータベースと照合することにより各サンプルのHLA-Aアリルを決定した。さらに同定したHLA-Aアリルに対するネオアンチゲンエピトープの結合能をNetMHC4.0にて解析し、各胆道癌のネオアンチゲンエピトープを同定した。以上より、胆道癌組織のエクソームシーケンスデータからネオアンチゲンの同定が可能であり、今後のネオアンチゲン特異的免疫治療研究への展開が期待される。
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