研究課題/領域番号 |
16K10613
|
研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
石渡 俊行 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (90203041)
|
研究分担者 |
吉村 久志 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (70645241)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 膵癌 / 分子標的治療 / FGFR-4 / 個別化治療 / SNP |
研究実績の概要 |
Fibroblast growth factor receptor-4 (FGFR-4)が、乳癌、卵巣癌、前立腺癌や口腔咽頭癌、胃癌、大腸癌、膵癌などの消化器癌で過剰発現していることが報告されている。さらに前立腺癌、肺癌、頭頚部癌や乳癌においては、FGFR-4の膜貫通ドメインに存在するG388RのSNPが予後の増悪と関連しているとされている。膵癌におけるFGFR-4の発現と、SNPの存在、さらにその役割について研究を行なった。 免疫組織化学的検討では、浸潤性膵管癌症例の約50%にFGFR-4の発現がみられ、その発現と腫瘍径、病期が正比例していた。6種類のヒト膵癌培養細胞における、FGFR-1~3のIIIb, IIIcアイソフォームと、FGFR-4のmRNA発現パターンをqRT-PCR法を用いて検討したところ、FGFR-4はFGFR-1~3のIIIb, IIIcとは異なった発現パターンを示していた。これらの膵癌培養細胞においてダイレクトシークエンス法で検討したところ、G388Rの遺伝子変異が半数の細胞株で認められた。 膵癌において、FGFR-4の発現が臨床病理学的に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。さらにFGFR-4がFGFR-1~3のIIIb, IIIcと異なった発現パターンを示すことから、近年、注目されているFGFRに対する分子標的薬による治療後に、FGFR-4を発現している癌細胞が残存する可能性が示唆された。また、膵癌においても、FGFR-4のG388RのSNPがその細胞動態に関与している可能性が考えられた。今後は、G388R変異を示すFGFR-4とwild typeのFGFR-4の膵癌の細胞動態への影響を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにFGFR-4の発現について、ヒト膵癌症例とヒト膵癌培養細胞株を用いて検討した。さらに膵癌培養細胞株において、他のFGFRとFGFR-4の発現パターンの比較検討を行なった。FGFR-4のSNPについても、膵癌培養細胞株で予想した結果が得られた。FGFR-4のヒト膵癌における発現を明らかにし、研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はFGFR-4とG388RのSNPの役割を明らかにするため、膵癌培養細胞系への遺伝子導入法を用い、細胞動態への影響を検討する。FGFR-4に対するshort hairpin RNA (shRNA)発現ベクターの導入によりFGFR-4の発現を抑制した場合と、FGFR-4の発現ベクターの導入によりFGFR-4発現を増加させた場合を比較検討する予定である。また、FGFR-4のG388Rのベクターとwild typeのベクターを導入し、細胞動態への影響を比較検討することで、G388Rの膵癌における役割を解明することを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験自体はおおむね予定通り進んでいる。実験に必要な物品費が、当初の予定よりも少なく済んだことから次年度使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は、膵癌細胞へのFGFR-4の遺伝子導入と、それによる細胞動態の変化を検討するin vitroの実験を予定している。今回の次年度使用額は、これらの実験において使用する予定である。
|