研究課題/領域番号 |
16K10617
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研究機関 | 富山県工業技術センター |
研究代表者 |
大永 崇 富山県工業技術センター, その他部局等, 副主幹研究員 (10416133)
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研究分担者 |
嶋田 裕 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (30216072)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膵臓癌 / 血中循環腫瘍細胞 / 上皮間葉転換 / 抗体 / EGFR / HER2 / N-Cadherin / PD-L1 |
研究実績の概要 |
膵臓癌は転移性が高く厄介だが、転移にはCTCが不可欠であることを考えると早期からのCTCの存在が予想され、それを捕捉できればCTCを利用した早期診断の可能性が考えられる。従来の検討では、早期の膵臓癌でEpCAMをターゲットとした捕捉により患者さんの10%程でしかCTCが検出されておらず、それが上皮間葉転換に起因することが推定されている。そこで本検討ではEpCAM以外をターゲットとしたCTC捕捉を検討している。 膵臓癌が高発現するマーカーとして報告があるEGFRとHER2について検討した。捕捉は筆者らが開発したポリマーCTCチップによる捕捉システムを用い、これらのマーカーに対応する抗体をそれぞれチップに導入して捕捉試験した。またEMTにより高発現するマーカーとして知られているN-Cadherinに対する抗体を導入したチップも用意して試験した。さらに近年、第4の癌治療として期待されている免疫療法において注目されているPD-L1は、EMTにより発現が上昇し膵臓癌でも認められるため同様に検討した。 以上の試験から、EGFR、HER2についてはここで選択した抗体により効率よく癌細胞を捕捉できることがわかった。一方、N-Cadherin、PD-L1については、ここで用いた抗体では十分な捕捉ができないことが分かった。そこで捕捉率が低いPD-L1について、捕捉マーカーの変換による捕捉を試みた。すなわち細胞上のPD-L1に予め抗PD-L1抗体を結合させ、チップ上には抗IgG抗体を固定化し、IgG-抗IgGの相互作用を利用した捕捉について検討した。。その結果、捕捉率は87%に向上した。本方法は他の抗体にも広く使用できるので、今後さらに検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CTC捕捉の検討は順調だが、悪性度解析のための準備が遅れている。悪性度解析は、マーカー発現と遺伝子解析の両面から進めることを計画しているが、特に遺伝子解析が予定していた共同研究の中断などにより遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
CTC捕捉については、抗体等の目処が得られたので臨床検体での捕捉に進む。悪性度解析は、マーカー発現を中心に検討しながら、遺伝子解析の基本的プロトコルの確立を急ぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿が少し遅れており、その費用を確保しているため。平成30年度の早いうちに投稿する。 また使用予定の抗体が市販品でなく(分子標的治療薬の原末)、メーカーとの提供に関する交渉に時間が掛っているため、費用を確保している。入手の目処が立ち次第、先に進める。
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