研究課題/領域番号 |
16K10618
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
種村 匡弘 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部), その他部局等, 招聘研究員 (30379250)
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研究分担者 |
三善 英知 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20322183)
江口 英利 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90542118)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膵癌 / 微小循環癌細胞 / 腹腔内遊離癌細胞 / テロメスキャン / 糖鎖 / 創薬 / オリゴデンドリマー / 糖鎖医薬 |
研究実績の概要 |
【背景・目的】切除可能膵(PK)癌患者に新規テロメラーゼ特異的ウイルス製剤(TelomeScan F35)を応用し末梢血中の生きた遊離癌細胞(viable CTCs)検出を行い予後予測、治療効果判定を行った。PKに対し強度変調放射線治療(IMRT)を用いた術前化学放射線療法(NACRT)を行っており、PK患者のv-CTC検出の有無、臨床的意義を解析した。【治療・対象】2013年1月からPKにIMRT 60Gy+GEM (800mg/m2)+S-1 (80mg/m2)によるNACRTを実施、NACRT前・後、術後にv-CTC値を測定した(N群)。さらに同時期に実施したPK surgery first症例でも術前・後でv-CTC値を測定した(S群)。 【結果】N群は男:女=5:11、計16例、年齢中央値は69歳(44~78)であった。[v-CTC推移]5例(31%)がNACRT前よりv-CTC陽性(1-4 cells)で、5例中1例はNACRT後にv-CTCは陰性化したが、残り4例でv-CTC値はNACRT後急上昇し(4-56 cells)、術後1ヵ月でもv-CTCは陽性を維持し(2-27 cells)、術後半年~1年でv-CTCは陰性化した。v-CTC上昇の4例中1例は術後8ヵ月で肝転移のため死亡した。[S群]男:女=5:3、計8例、年齢中央値70歳(53~85)。7例にR0手術を行った(PD:DP=5:2)。術前後共にv-CTCが0であった症例は4例で、1例は術前v-CTCは陰性であったが術後4 cellsと上昇、S-1補助療法後v-CTCは陰性化した。術前v-CTC陽性(1~4 cells)は3例(38%)で、2例は術後陰性化、残り1例は術中に微小肝転移が判明し切除不能とした。 【考察・結語】PKにおけるv-CTC値は早期転移巣形成などを予測できる良好なバイオマーカーである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にしたがっておおむね順調に研究は進行できた。 膵癌における生きた遊離癌細胞(viable CTCs)検出の真の意義については、臨床経過と対応させて解析をすすめることにより、予後因子を良好に反映できるバイオマーカーとなり得るか否かを明らかにできると考えている。 また、膵癌根治に向けた強力な癌ワクチン療法を確立すべく、膵癌細胞表面に結合できるα-gal-GDの分子設計にも着手した。その結果、最もヒト自然抗体に認識され、抗腫瘍免疫を惹起できるα-gal-GDの分子構造を決定でき、viable CTCs、さらにはviable PTCs(腹腔内に遊離してきた生きた膵癌細胞)に結合させ癌細胞捕捉実験を進める準備が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
局所進行膵癌の患者において、viable CTCsの検出は予後因子として非常に重要であることが明らかになった。さらに、テロメスキャンを用いて膵癌患者の腹腔内の遊離癌細胞の検出にも成功しており、今後、臨床経過と照合し腹膜再発の予測因子となり得るかを解析する。 さらに、平成28年度で進めてきたα-gal-GDの分子設計を確定し、ヒト免疫細胞に最も捕捉されやすいα-gal-GDを選定し、viable CTCs、さらにはviable PTCsに結合させ癌細胞捕捉実験を進める。 また、現在、世界中で臨床応用されている膵癌の癌抗原であるMUC1, Mesothelinにα-gal-GDを結合させた複合体を合成し(世界初のワクチンマテリアル)、膵癌癌抗原に対する抗腫瘍免疫反応を惹起できるかを検証し、さらにin vivo実験により膵癌腫瘍増大抑制試験を行い癌ワクチンとしての有効性を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、概ね研究計画に沿って進展することができた。 研究経費については、テロメスキャンのウイルス変更、遊離癌細胞数および染色分子の解析方法の変更・追加があり、その正確性、特異性を検証するpilot studyを実施することとなった。そのため、当初計画より少ない検査費用でCTC解析を遂行することができた。したがって、約30万円の平成28年度経費を平成29年度に繰り越すことができた。平成29年度は、血中だけでなく腹腔内遊離癌細胞診にもテロメスキャンによる癌細胞検出法を応用し生きた末梢血中および腹腔内の遊離癌細胞の解析経費として有効に活用し、引き続き研究を遂行し本研究の目的を達成できると考えている。さらに、α-gal-GDの分子設計、癌細胞との結合試験にも着手するための研究費用にも使用できる。
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次年度使用額の使用計画 |
膵癌患者の血中内微小癌細胞および腹腔内遊離癌細胞の検出を引き続き行い、臨床的意義を確定していくために研究費を使用する。 また、α-gal-GDの分子設計を行い、最もヒト抗原提示細胞が認識しやすいα-gal-GD分子を作成し、血中内微小癌細胞および腹腔内遊離癌細胞に結合させ、抗腫瘍効果を検定していくための研究に使用する。さらに、MUC1, Mesothelinと言った膵癌の癌抗原ペプチドとの結合実験を行い、安定したα-gal-GD-MUC1, α-gal-GD-Mesothelinを合成し、糖鎖改変ペプチドワクチンとしての有効性を検証していく。
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