研究課題/領域番号 |
16K10620
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
増田 信也 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30596094)
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研究分担者 |
齋木 佳克 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50372298)
川本 俊輔 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20400244)
吉岡 一朗 東北大学, 大学病院, 助教 (90770272)
阿部 高明 東北大学, 医工学研究科, 教授 (80292209)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 心臓移植 / インドール化合物 / ATP / ミトコンドリア / 虚血再灌流障害 |
研究実績の概要 |
本研究で使用している新規インドール化合物は、ATP増加、虚血に対する細胞保護作用を有しており、腎、脳における虚血再灌流障害に対する抑制効果が実験的に示されている。そこで今回我々は、本化合物の心移植における虚血再灌流障害に対する有効性を検討し、その臨床応用に向けた可能性を探求することとした。 今年度は、ラット心臓におけるインドール化合物の効果を評価するために、摘出からの経過時間によるラット心筋のATP量の変化について検討した。ラット(LEW種、雄、250-300g)をインドール化合物投与群と非投与群に分け、心臓摘出の24時間前と2時間前に投与群にはインドール化合物5㎎/㎏、非投与群には溶剤のみを、いずれも経口投与した。吸入麻酔(セボフルラン)で全身麻酔後、胸腹部正中切開を入れ、ヘパリンを腹部下大静脈より100単位注入し、1分後に心臓を摘出した。摘出した心臓はすぐに4℃の生理食塩水に浸し、数回その中で拍動することで、心臓内の血液を排除させた。心停止後、氷冷したシャーレ上で心尖部を6等分し、それぞれ0時間、6時間、12時間と4℃生理食塩水に保存した。0時間のものは6等分後、すぐに凍結保存した。それらの検体をホタルルシフェラーゼ発光法により心筋内のATP含有量を評価した。結果は、0時間ではインドール化合物投与群で優位にATPが多くなっていた。しかし、6時間、12時間では差は認めなかった。この結果から、インドール化合物には心筋内ミトコンドリアのATP産生を亢進させる作用があるが、6時間、12時間の4℃生食保存中にATPが代謝されてしまったと考えられた。この実験結果を受け、次に同様のモデルで、保存時間を2時間とし、再度検討してみた。結果は、やはり0時間以外でATP量に差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、今年度は移植モデルの確立、ラット心移植を実施する予定であった。しかし、実際には、その予備実験として行った評価で、ラット心筋内のATPが時間依存性に減少し、心移植のGolden timeである4時間を待たずに、インドール化合物投与群とコントロール群とで同程度まで低下してしまうという結果となった。そのため、本研究の主要評価項目である、移植心の生着期間を評価するまでに至っていない。まずはラット心筋内のATPを移植まで、コントロール群に比べ有意に増加させておく工夫が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
心臓移植は、現在、ドナーからの心臓摘出から、移植後心拍動開始までの時間は4時間以内とされている。心臓を摘出してから移植するまでの虚血時間で、不可逆的な心機能障害が生じ、移植後に心不全状態に陥ることがあり、まれに、再度別の心臓を移植しなければならないことがある。今年度の実験では4時間ではすでに心筋のATP含有量は非投与群と同等に低下しており、少なくとも4時間はインドール化合物の効果を持続させる工夫が必要であると考える。一つは投与量であるが、現在はこれまでの先行実験で脳、腎での評価に用いられていた1.5㎎/㎏を投与していたが、これを増加させて再評価してみる。容量依存的に心筋のATP含有量が増加すれば、4時間後も非投与群と差が出る可能性がある。また、保存液も実際の心移植に倣ってセルシオ液を使用し、より臓器保護が効いた状況下での評価を行う。また、心移植モデルの確立も今後の重要な課題の一つであり、前述の実験と並行して行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように、実験が心筋ATP評価の段階で止まっており、心臓移植の評価が出来ていないのが現状である。したがって、当初予定していた移植用のマウスの購入や心筋の免疫染色などを行っていないため、次年度使用額が発生している。
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次年度使用額の使用計画 |
主には動物実験に必要な動物(マウス)の購入、手術機材(麻酔、縫合糸、器具など)が中心となる。また、評価に必要なATP測定キット、抗体、プライマーの購入も検討している。
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