研究課題/領域番号 |
16K10623
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
深原 一晃 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (40343181)
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研究分担者 |
芳村 直樹 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (20401804)
土居 寿男 富山大学, 附属病院, 講師 (80361963)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心房細動 / 周波数解析 / マッピング / 手術 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は慢性心房細動の外科治療成績向上のために、術前に電気生理学的検査にて三次元(3D)マッピングシステムを用いて心房内で記録される連続的で周期の短い分裂した電位(complex fractionated atrial electrograms;CAFE)を描出し、それに心房細動の細動波(f波)の周波数解析を組み合わせることにより、心房細動の起源となる標的と基質を想定し、機序に応じた合理的な心房細動手術法を構築することである。 まずは慢性心房細動症例において、術前にEPS(心臓電気生理学的検査)にて3Dマッピングシステム((Ensite NavX, St. Jude Medical社)を用い、心内電位を採取し心房内で記録される連続的で周期の短い分裂した電位(Complex fractionated atrial electrograms; CFAE)を三次元的に描出し、3D構築した。 さらにf波のみを左右心房内から一定時間採取(20秒間)、それを高速フーリエ変換(FFT解析)し、各区間の最大周波数を求め、その平均周波数から興奮周期(FF、速さ)を算出する。時間的不均一性(ばらつき)指標として6区間の標準偏差(SD)、変動係数(CV)を求め、この解析をそれぞれ心房内全体で行い(空間的特異性)を調べる。採取された心内電位の周波数解析を行い、CFAEと周波数解析の関連性を判定する。その解析結果の集積から、個々の症例において心房切開、電気的隔離線の至適部位を検討し、最終的には不要な焼灼ラインを減らして、より合理的な心房細動手術法を構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、僧帽弁閉鎖不全症に合併した慢性心房細動6症例、平成29年度は4症例に術前にEPSを施行し、CFAEの描出を行い、右房に1-3(平均2.5±0.8)ヵ所、左房に2-4(平均2.4±0.7)ヵ所にCFAE siteを認めた。検査時間は平均53.1± 22.2分で、CFAE部位を右房側はカテーテルアブレーションにより焼灼し、左房側は手術の際に冷凍凝固(二酸化炭素、2分間)を行った。手術時間は平均249± 31.2 分、心房細動手術に要した時間は25.7 ± 5.6分であった。平均追跡期間11.7 ± 8.5か月で対象となった症例はすべて術後洞調律に復し、早期の成績からは効果が認められた。(一例のみ心房細動となったが、術後3か月で洞調律に復した) 平成29年度はさらに症例を追加し、CFAEマッピングを参考に一般的なMaze手術の電気的隔離線を減らして、CFAEをターゲットとして冷凍凝固を行い、その成績を検討したところ、その早期成績は一般的なMaze手術と同等であることが判明した。 また、得られた心内電位からf波周波数解析を行い、解析器機の設定を調節して検討したところ、周期の早い部位とCFAE部位近似しており、その関係性が強く示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
CFAEマッピングに基づいた心房細動手術は順調に件数を重ね、すべての症例で有害事象なく、洞調律への復帰を果たしていて、その早期成績は満足できるものであった。CFAEをターゲットとした心房細動手術は、臨床的に効果が高いことが判明したが、より有効な心房収縮を得るために焼灼範囲を減少させることにより、同じく洞調律を維持できるか、侵襲を減らすことができるか等について今後の臨床的課題となる。 一方、得られた心内電位からf波周波数解析を行ことについては、解解析器機の設定を調節している段階であるが、周期の早い部位とCFAE部位はおおよそ近似しており、その関連性について検討を行っている。今後はさらに症例を重ね、f波周波数解析の周期の早い部位とCFAE部位が心房細動の機序にtriggerあるいはrotorとして関与しているか、電気生理学的に検討を加える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)EnSite NavX (St. Jude Medical社)による電位採取とCFAEマッピングを構築するプログラムのシステム開発の一定額を拠出する予定であったが、新しいプログラムを作成することなく、その関連性を見出すことが可能であったため、支出が抑えられた。
(使用計画)さらに研究症例数を増やし、データの蓄積を行い、論文発表、国際学会発表などを予定している。必要な消耗品や成果発表に使用する予定である。
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