研究課題/領域番号 |
16K10624
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
寺澤 幸枝 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (50566990)
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研究分担者 |
大島 英揮 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (40378188) [辞退]
成田 裕司 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60378221)
諫田 泰成 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 部長 (70510387)
藤本 和朗 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (70644665)
緒方 藍歌 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (70718311)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心筋梗塞 / エクソソーム / 抗炎症 / 心筋再生 / microRNA |
研究実績の概要 |
広範囲心筋梗塞では、壊死心筋による激しい炎症の後、線維組織に置換され、時間とともにリモデリングが進行し、心腔拡大や収縮障害、最終的に重症心不全を引き起こす。近年、移植片対宿主病(GvHD)の臨床治験において、RNAや蛋白を含む50-200nmの細胞外微小胞「エクソソーム」の抗炎症作用による治療の有効性が報告されている。研究代表者らは、これまでに大動脈瘤に対して間葉系幹細胞(MSC)から産生されるエクソソーム投与療法を行い、瘤縮小効果が得られたことを明らかにしてきた。このことから、エクソソームは抗炎症および組織再生に重要な因子であるという新たなメカニズムに基づき、本研究ではエクソソームを利用した新たな心筋再生療法の可能性を探るための基礎的研究を行った。これまでに、超遠心法にて各細胞培養上清からエクソソームを回収し、タンパク濃度測定および透過型電子顕微鏡による直径約100nmのエクソソームの確認を行なった。また、定量RT-PCRにて血管新生や心筋細胞アポトーシス抑制、炎症抑制に関与するmicroRNAを同定した。 本年度では、ラットを用いた冠動脈左前下降枝結紮閉鎖による心筋梗塞モデルの作成を試みた。術前および術後の超音波エコーによる心機能評価や組織学的評価では、一部梗塞を認めたものがあったが、梗塞を認めないものも多くあった。また、治療に用いるエクソソーム注入量100μgを回収するには1億個以上の細胞を必要とすることが判明し、in vivoで各エクソソーム投与の効果を比較検討するのは困難であると考えた。したがって、in vitroの事前検討でどの細胞由来のエクソソームが有用かを調べる必要が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各細胞から回収したエクソソーム量は1万個あたり0.5~1μgで、動物実験で予定していた注入量100μgを、それぞれの細胞から回収することが困難であり、動物実験で各細胞由来エクソソームの効果を比較検討することは難しいと判断した。したがって、事前検討として、in vitroにて各細胞由来エクソソームの効果を比較検討し、より効果の高かったエクソソームを動物実験で確認する必要が生じた。加えて、心筋梗塞モデル作成にかかる手技が煩雑で、実験に用いることができる状態のラットを用意することができなかった。以上のことから、当初計画よりやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
事前検討として、in vitroにて各細胞由来エクソソームによる抗炎症効果や血管新生、心筋細胞分化・増殖を比較検討し、より効果の高かったエクソソームをラット心筋梗塞モデルで検証する。注入するエクソソーム量については、当初計画の100μgを予定しているが、至適注入量の検討も行う。心臓エコーにて経時的に心機能評価を行いつつ、治療4週間後をエンドポイントとして、組織学的評価や生化学的評価などを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
大量のエクソソームを必要とする動物実験で検討することが難しいと判断し、まずはin vitroで各細胞由来エクソソームの効果を比較検討する必要が生じた。したがって、当初予定していた動物実験にかかる動物購入費や飼育管理費、解析のための試験試薬費等に使用額差が生じた。 使用計画として、次年度使用額は、in vitroにて効果の高かったエクソソームをラット心筋梗塞モデルで検証を行うために必要な動物購入費や飼育管理費、解析のための試験試薬費、ディスポ用品費等に用いる。
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