研究課題/領域番号 |
16K10625
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上原 京勲 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (60462280)
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研究分担者 |
池田 義 京都大学, 医学研究科, 准教授 (40281092)
山崎 和裕 京都大学, 医学研究科, 助教 (50464227)
南方 謙二 京都大学, 医学研究科, 講師 (60539675) [辞退]
升本 英利 京都大学, 医学研究科, 助教 (70645754)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 弁膜疾患外科学 / 人工心肺 / 全身性炎症反応症候群 |
研究実績の概要 |
致命的な心臓外科術後合併症(各種臓器虚血、再灌流障害、急性肺障害、感染症、敗血症)に対し、全身炎症における標的タンパクとして知られるHigh Mobility Group Box-1(HMGB1)を対象とした薬剤の抽出およびその有効性効果検証、安全性評価を行うことが本研究の目的である。 平成28年度ではHMGB1を標的としDICや肺炎、肝移植などのモデルにおいて、全身炎症抑制・局所臓器障害抑作用を示しているヒト遺伝子組み換えトロンボモデュリンを、われわれがすでに確立しているラット人工心肺に使用し、その全身および各臓器における炎症抑制効果を確認した。非治療群と比較し、血中サイトカイン(TNF-α,IL-6)の抑制、血中HMGB1抑制がみられ、全身での炎症が抑えられていた。また、肺組織でのサイトカイン(TNF-α,IL-6,IL-1β)、HMGB1のメッセンジャーRNAの抑制、組織学的な肺障害(炎症・鬱血・出血・浮腫)の抑制および細胞核外HMGB1流出の抑制を認め、酸素化の維持、肺水分貯留の軽減を認めた。これらの成果について、2016年ヨーロッパ心臓病学会、アメリカ心臓病学会にて発表し、現在論文化を進めている。 現在、既知のHMGB1対象疾患に対し有効とされる治療薬群および分子標的治療薬ライブラリ・阻害薬ライブラリを使用し、HMGB1産生抑制あるいは分解、および各臓器に対する炎症抑制効果を示す薬剤を選定している。今後、ヒト遺伝子組み換えトロンボモデュリン使用による炎症抑制効果と比較することで、その炎症抑制効果について検討していく予定である。また人工心肺モデル以外の動物モデル(大動脈瘤モデル・人工血管感染モデルなど)を確立する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度末にラット用人工心肺回路における人工肺作成のための材料不足により、生産量が一時制限されたため、一時的な進捗の遅延がみられた。しかし、再度生産量が確保されたため、今後計画実験を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、現在選定しているHMGB1を標的とする、もしくは可能性のある薬剤について、ラット人工心肺モデルに投与し、その全身炎症・臓器保護効果について確認し、HMGB1標的薬剤を抽出する。その抽出薬剤について、ラット人工血管感染モデル、前縦隔骨髄苑モデルに投与し、その敗血症抑制、全身炎症抑制について評価する予定である。
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