研究課題/領域番号 |
16K10626
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
升本 英利 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (70645754)
|
研究分担者 |
池田 義 京都大学, 医学研究科, 准教授 (40281092)
南方 謙二 京都大学, 医学研究科, 講師 (60539675) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 心筋疾患外科学 / iPS細胞 / 拡張型心筋症 |
研究実績の概要 |
(研究の目的) 心筋症を背景とした末期心不全に対する心臓移植の代替治療として、左室補助装置・外科的左室形成術等との併用により大きな効果を得るための薬剤を開発するために、心筋症患者由来iPS細胞を樹立し、そこから分化誘導し作製した三次元バイオマテリアル人工心臓組織を用いた薬剤スクリーニングを行うことにより、不全心に対する収縮力・アドレナリン受容体感受性等を回復しうる新規薬剤開発に結びつける。さらに心筋症による末期心不全に対するより効果的な集学的治療のための基礎研究として、心筋症および左室補助・左室形成モデル動物への投与実験を行うことで、早期臨床応用を目指すことが目的である。 (研究の成果) 前年度までに、詳細な病態再現を行うための多様な形態の三次元組織を作製するための予備的実験として、メッシュ状の人工組織作製を行い、その優れた組織機能(細胞生存・収縮力・配向性)につき示した。本年度はこの研究成果を論文化した(Sci Rep, 2017)。さらに本年度は、よりヒトの左心室の形状に近い形の人工組織として、ドーナツ状の人工組織作製に取り組んだ。サークル状の組織鋳型を使用することにより、自己拍動性のドーナツ型人工組織を作成し、その組織学的および動態的特性につき検討を行った。また、疾患再現モデル作製のための細胞準備として、前年度の拡張型心筋症患者に続き、外部セルバンクより入手した右室原性不整脈性心筋症患者から樹立したiPS細胞を用いた、心筋細胞など、心臓を構成する細胞への分化誘導の方法を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までのメッシュ状人工組織を用いた研究成果を論文化することができた。本年度はメッシュ状の形態をさらに発展させ、ヒトの左心室構造により近いドーナツ型人工組織を作製することが出来た。さらに、右室原性不整脈性心筋症患者由来のiPS細胞を用いて、心血管細胞に分化誘導する方法を確立することが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度までに確立した、拡張型心筋症患者および右室原性不整脈性心筋症患者由来のiPS細胞を用いて、これまで研究してきた各種形態の人工組織を作製し、その生物物理学的特性を含めた解析を進めていくことで、新規薬剤開発に向けた基礎的知見を得る。また、動物実験による治療効果の確認のための準備を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度のヒトの左心室構造に近い形のドーナツ型人工組織の作製において、3Dプリンター技術を含む鋳型の開発に多くの消耗品費あるいは外注費を要すると考えられたが、その経費が予想より低く抑えられたため、その分を本年度の経費として、動物実験にかかる費用あるいは研究成果の学会発表・論文発表における費用に充てる計画である。
|