研究課題/領域番号 |
16K10628
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
福嶌 五月 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (80596867)
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研究分担者 |
斎藤 俊輔 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30600126)
仲村 輝也 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (90511626) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 心筋再生 / プロスタサイクリン作動薬 / ナノパーティクル / DDS / 心筋虚血再灌流 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、プロスタサイクリン作動薬であるOXMを含有するNP(OXM-NP)を虚血再灌流を含む様々な心疾患モデルに、経静脈投与し、その治療効果とメカニズムを検討することで、OXM-NPの最適な投与方法・投与量・対象疾患を同定し、前臨床試験、安全性試験、医師主導型治験の基礎データとすることである。 平成28年度の計画は、「経静脈投与によるリポソームNPの局在を検討する。NPをGFP、SPIOにより標識しモデル動物に経静脈投与し、それぞれ蛍光顕微鏡とMRIを用いて、心筋組織における局在と全身の局在を検討する。さらに、培養細胞に金コロイド標識NPを投与し、細胞への取り込みについて検討する。」ことであった。 まず、Gdにより標識したリポソームNPを、ラットの心筋虚血再灌流モデルに静脈注射し24時間後に犠牲死させ、11.7T-MRIを用いて心臓におけるリポソームNPの局在を検討した。結果、リポソームNPは虚血領域に一致して極めて選択的に集積することが判明した。GFPにて標識したリポソームNPを同様に投与し、共焦点顕微鏡にて検討したところ、虚血境界領域の細胞間質に局在することが判明した。また、OXMの心筋内濃度をLCMSMS法にて検討したところ、投与後24時間に心筋内濃度はピークを迎え、その時点での濃度は血中濃度を上回るものであった。以上より、心筋虚血再灌流に対するOXM-NPの静注により虚血心筋に選択的にOXMがDeliveryされる、DDSとしての有用性が示唆された。 続いて、この心筋虚血再灌流に対するOXM-NP静注療法の治療効果につき検討したところ、血管新生因子の発現亢進、炎症性サイトカインの発現低下、微小血管の増生、心筋細胞肥大の抑制、心筋梗塞巣の縮小などの治療効果が確認できた。以上から本治療の実現可能性、安全性、治療効果が確認され、研究の継続の意義が保証される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心筋虚血再灌流において、OXM-NPを静注することで、選択的に虚血心筋にOXMがDeliveryされることが予定通りの手法をもって証明された。さらに、ラット心筋虚血再灌流モデルにおいて、実現可能性・非GLP安全性・治療効果があることが確認され、これは予定を大幅に前倒しにした結果であった。一方、予定にあった金コロイドを用いた、OXM-NPの細胞内局在の検討については、まだ知見を得られておらず、その実験の意義も含めて今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の予定は、「前年度に得られた知見をもとにさらに臨床応用を目指した研究を続ける。具体的には、急性心筋梗塞もしくは慢性心筋梗塞、いずれかにおいて治療効果が十分見込めると考えられた場合には、ミニブタモデルを用いて様々な投与量で行い、最小有効投与量を決定することで前臨床研究の薬効薬理試験データとする。また、ハムスター拡張型心筋症モデルや、ラット下肢虚血モデルなど、異なる心血管疾患モデルにOXM-NPを経静脈投与し、治療対象疾患の拡大を模索する。」であった。 平成28年度の研究成果から、少なくとも心筋虚血再灌流においては、相当の可能性があることが示唆された。臨床応用を考えると、ラットを用いた研究により、1)最低有効投与量の決定、2)至適投与時期の決定、3)メカニズムの更なる検討、が必要と考えられ、これを平成29年度に行いたい。これに続く、ラットを用いたGLP基準安全性評価については、次の資金を獲得することで行いたい。また、下肢虚血モデルの実現可能性・非GLP安全性、治療効果についても検討を行いたい。
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