研究課題/領域番号 |
16K10631
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
泉谷 裕則 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (90419200)
|
研究分担者 |
坂上 倫久 愛媛大学, 医学系研究科, 助教(特定教員) (20709266)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 弁膜症 / 大動脈弁狭窄症 / HB-EGF / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
大動脈弁狭窄症(AS)は加齢・動脈硬化により大動脈弁が石灰化、硬化するため圧格差を生じる。それに伴って心肥大を誘発し、突然死の原因となる重篤な疾患である。高齢化社会である我が国における患者数は年々増加傾向にあるが、本疾患発症の分子メカニズムはほとんど分かっていない。また、我々はこれまでの予備検討の結果、Epidermal Growth Factor(EGF)ファミリーの一つであるHeparin-binding EGF-like growth factor (HB-EGF)がAS患者由来の大動脈弁で発現亢進していることを見出している。これまでAS病態とHB-EGFの関連について解析した例は全くない。そこで本研究では、日本人大動脈弁狭窄症患者由来の大動脈弁を用いて、早期発見のためのバイオマーカーを見出し、さらに新規治療薬開発のために、ASにおけるHB-EGFの機能を明らかにし、その発症機序を解明することを目的としていくつかの実験を計画・実施した。まず、バイオマーカー探索の実験に際して、臨床検体の収集を行い50例近い症例数を得た。一方、バイオマーカーの探索実験に必要な弁由来の内皮細胞は,少量の細胞しか採取できず、培養が非常に困難であったため、弁間質細胞(VIC)の培養調整を試みた。そこで本年度は、VICの細胞培養法の最適化とその特性解析を実施した。これまで20例近い患者よりVICの培養に成功しており、来年度には遺伝子網羅解析を実施する予定としている。一方で、血管内皮細胞特異的HBEGF欠損マウスの樹立に際してマウスの交配実験も進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
弁由来の細胞培養の最適化に時間を要したためである。これまである一定の酸素濃度下で培養することがVICの未分化維持と効率的細胞増殖に必須であることを見出したので、今後は本法を用いてバイオマーカーの探索実験を実施することとしている。また、HB-EGFのノックアウトマウスの樹立(交配など)にも時間を要したことも一因である。
|
今後の研究の推進方策 |
大動脈弁狭窄症の患者さんの中から調整したVICからtotal RNAを抽出し、miRNA及びmRNAの網羅解析を行う。なお、RNA抽出に際しては、弁正常部位、弁石灰化部位に分けて採取する。両者から調整した培養細胞を用いて網羅解析により特性を明らかにする。見出した遺伝子については、実際に免疫組織染色にて患者由来の弁組織で局在を確認する。 一方、血管内皮細胞特異的HB-EGFノックアウトマウスを用いてAS発症への関与について解析を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
VICの培養最適化に時間を要し、当初予定していたバイオマーカー探索のための網羅解析がまだ実施できていないため。またHB-EGFノックアウトマウスの作成にも時間を要しており、そのマウスの解析を実施できていないためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
次世代シーケンサー及びマイクロアレイ解析によりバイオマーカーの探索実験を実施するため、その予算として次年度に使用する予定にしている。また、ノックアウトマウスの樹立に伴って、そのin vivo解析及び免疫組織学的検討に次年度に使用する予定としている。
|