研究課題
今年度は、Valve Interstitial Cells (VIC)の細胞培養法の最適化とその特性解析を引き続き実施した。前年度はAS患者よりVICの単離・培養に成功しており、今年度には遺伝子発現網羅解析を実施する予定としていた。遺伝子レベルではマイクロアレイを用いて、タンパク質レベルでは二次元泳動法を用いて、大動脈弁狭窄症の石灰化に寄与する新規分子の同定を実施した。解析対象患者は全てsevere ASであり、5検体分それぞれからvalve leafletを正常組織と石灰化部位にわけ、コラゲナーゼ処理後に組織を培養dishに撒いた。培養を開始してからすぐにdishに接着するVICを維持し、コンフレントになった時点で細胞回収し網羅解析を実施した。その結果、石灰化病変部位由来のVIC特異的に有意に発現変動していた遺伝子として87種、同定することに成功した。これらの遺伝子の中には、従来AS患者で高発現する因子も含まれていたが、全く報告のない新規因子も新たに見つかった。網羅的タンパク質発現解析においては、遺伝子発現解析では判別が難しいPost-translational modificationによって特性変化するAS関連タンパク質も見いだすことに成功した。しかし、石灰化部位由来VICを用いた遺伝子発現解析結果には我々が注目しているHB-EGFは含まれなかった。これらのデータは国内のいくつかの学会で発表し、論文については現在投稿準備中である。
2: おおむね順調に進展している
網羅解析に必要なAS患者由来VICの収集、さらにはVICの培養条件の検討に時間を要していたが、本年度は、当初予定していた実験計画を遂行できており、遺伝子レベルあるいはタンパク質レベルでの網羅解析によりいくつかのAS新規治療標的候補分子を見出すことに成功しているため。
遺伝子発現解析及びタンパク質発現解析の結果、ASで高発現する因子の同定に成功したため、今後は、これら因子がAS病態形成にとって機能的であるか、あるいは病態予測を示すAS診断のためのバイオマーカーとなるかについて検討を進める予定としている。またAS患者より病態特異的な血清タンパク質、あるいはエクソソーム中に存在する核酸分子についても見出しているため、これらの因子がAS発症予測バイオマーカーとして有用かどうかをELISAやデジタルPCRを用いて解析を進める予定としている。
予定していた検体数の網羅的遺伝子発現解析がまだ全て完了していない。当初次世代シーケンサーを用いて解析する予定であったが、実験進行の都合上マイクロアレイ解析に切り替えたことで、少し遅れたことが原因である。当解析については次年度に実施する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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