研究実績の概要 |
2018年度は、前年に引き続き、自治医科大学倫理委員会の承認の元、大動脈狭窄症に対する治療(TAVR/SAVR)を実施した70歳以上の高齢者から、2019年1月までに合計23名の患者検体を採取して(TAVR群:T群N=12・SAVR群:S群N=11例)、低侵襲手術術後の免疫応答に関する研究実験を施行した。 最終的には、対照群(C群)として弁膜疾患のない高齢者6例の検体も採取した後に、術前・術直後・術後24時間の3時相でS群・T群の血漿成分を抽出し、MILLIPLEX cytokine panel(Merck)を使用し、71の サイトカイン・ケモカイン濃度を各時相で測定した。C群平均値でnormalizeしたサイトカイン濃度をS群・T群の2群間で比較し、1.7倍以上のFold差とMann-Whitney U testのP値<0.1の2基準を同時に満たすものを群間格差ありと定義した。global gene expression解析を Subio Platform(Subio Inc)で行い、David Functional Annotation(LHRI)でenrichment解析した。 結果は、全71のうち39サイトカインで術後の1もしくは2時相で群間格差を認め、階層型クラスタリング法で以下4群に分類した。cluster A: S群高度増加・T群増加抑制(8サイトカイン:IL-6, IL-8, IL-10, IL-15, IL-16, IL-28A, IL-1ra, G-CSF)、cluster B: S群軽度増加・T群増加抑制(12サイトカイン:GM-CSF, MCP-1, IL-11, IL-17Aなど)、cluster C: S群軽度増加・T群発現減少(13サイトカイン:CCL1, CCL17, IL-23Aなど)、cluster D:両群とも発現減少、T群でより顕著(6サイトカイン:IL-4, CCL11, XCL1など)。Pathway解析ではJAK-STAT signaling pathwayなどの関与が示唆された。 本研究成果は2019年度第72回日本胸部外科学会で発表予定である。
|