研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、心臓血管外科におけるさらなる患者QOL向上の一助として、術後の伝導障害回避に注目し、①刺激伝導系、その栄養動脈、ならびに弁複合体との位置関係についての臨床解剖学的検討、②新規伝導組織の継続的検索、③将来の刺激伝導系の臨床画像描出のための医療用MRIを使用した撮像法の検討、④3Dスキャナーを利用した微細解剖学的3次元データの収集、⑤多種画像モダリティーを利用した刺激伝導系の3次元立体モデルの作製、を行うことであり、これらに基づいて最終的に様々なStructural Heart Disease外科各術式の長所と短所の解剖学的評価と提案を行うことである。 その結果、今年度は十分な基盤データの蓄積とともに、特に刺激伝導系とその栄養血管に関しての”ゴールド・スタンダード”とも言える成果の取りまとめと発表を行うことができた(Kawashima and Sato, Int J Cardiol, 2018; Data Brief, 2018)。本報告では、(1)房室結節動脈が従来考えられているより多様な走路を有することを正確な体内3次元配置に基づき提示を行い、(2)房室結節動脈は同部を栄養後、すぐに房室伝導系を去り、周囲の作業心筋を還流する傾向があることを形態学的に証明した。 また、その形態計測で示された微細形態情報は現在の医療画像解析を用いて正確に反映させることが困難であることを示したものの、その結果や方法論は今後の臨床撮像において有用な基盤データを構築したと言える。さらには、精細CTを利用した3次元画像提示のための撮像方法や条件の最適化を行い、最終発表としての論文作成に向けて準備が整った。 本助成期間内で得られた成果は、十分に目的が達成されたと言えるものであり、本研究をさらに応用させた発展型研究へ展開される予定である。
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