研究課題/領域番号 |
16K10642
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
網谷 亮輔 日本医科大学, 医学部, 助教 (30763594)
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研究分担者 |
藤井 正大 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60297926)
別所 竜蔵 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60281432)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アクアポリン |
研究実績の概要 |
【課題1:AQP2について】心臓血管外科分野において尿中AQP2を対象とした研究は報告が皆無である.当該研究は,周術期に起こりうる尿中AQP2の変動を明らかにすることに意義がある.これは,術後にみられる体液貯留・浮腫の原因の一端を解明し術後の水分管理を改善させ手術成績の向上や入院期間の低減が期待できる.平成28年度は導入研究として,人工心肺を使用する大動脈弁置換術5例の術前,第1病日,第7病日,術1ヶ月後の血中バソプレシン(AVP)と尿中アクアポリン2(AQP2)を測定した.AVPの変化は1.5-14.5-1.7-1.8(pg/mL),AQP2の変化は2.7-28.4-4.1-6.1(ng/mL)であった(それぞれ術前,第1病日,第7病日,術1ヶ月後).AVP,AQP2とも術後一過性に高値を示したが,1週間後には低減し1ヶ月後の数値と有意差は認めなかった.また,術前のAVPとAQP2には強い正の相関(相関係数0.841,p=0.0062)が見られ,術前AVPとBNP,AQP2とBNPにもともに正の相関(それぞれ相関係数0.754,p=0.0280,相関係数0.721,p=0.0421)が認められた. 【課題2:AQP7について】水チャンネルAQP7は心臓に発現しており,肥満との関連が報告されている.そのためAQP7欠損が術中心筋保護に与える影響を検討することは心臓手術の成績向上に繋がると考えられる.当該研究ではAQP7欠損マウス(AQP7-KO)と野生型マウス(WT)を使用しランゲンドルフモデルによる灌流実験を行う予定である.平成28年度は当大学の動物実験承認や組換えDNA実験承認の手続き,実験棟の組織委員会の改変があり清掃・整備などセットアップに時間を要した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【課題1:AQP2について】 平成28年度に予定していた導入研究は終了しており,概ね順調に進展している. 【課題2:AQP7について】 当大学の動物実験実施のための規定が変更されたため,それに基づき動物実験講習会への参加,動物実験計画書の承認や組換えDNA実験の承認などの手続きが必要となった.また,実験棟の組織委員会の改変があり,使用規約の見直しや実験棟の清掃・整備などが行われた.平成28年度はこれらに時間を要した.
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今後の研究の推進方策 |
【課題1:AQP2について】 本研究として,当施設の待機心臓手術患者のうち①人工心肺を使用する患者6例②オフポンプ冠動脈バイパス術6例,の2グループからデータを収集する.導入研究の結果から術後1週間目と1ヶ月目と差を認めないことや臨床的により術後管理に直結するデータとして1ヶ月目の測定を第4病日に変更する. 【課題2:AQP7について】 まず,実験に使用するWild-typeマウス(C57BL/6N)の摘出心を用いて60-120分間の灌流実験を行い,心拍数や心発生圧,冠灌流流出量などのパラメータを測定し,安定した実験環境を確立する. AQP7-Knock-outマウスを節約するため一部計画を変更する.Wild-typeマウスの摘出心を用いて単純虚血よる心停止後に30分間の再灌流を行い,心拍数や心機能回復率,冠灌流圧などのパラメータを測定する.この虚血時間を10分,20分,30分と変化させ,本実験に用いる虚血時間(X分間)を決定する.この虚血時間(X分間)を使用してAQP7-Knock-outマウスの摘出心を用いて同様の灌流実験を行いのパラメータを測定する.これにより,心筋保護液の効果を判定する本実験のコントロール群をWild-typeマウスにするかAQP7-Knock-outマウスするか決定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
AQP7に関する研究では平成28年度は実験準備に時間を要したため,AQP7-Knock-out マウスの復元・繁殖管理費用が発生しなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
AQP7-Knock-out マウスの復元・繁殖管理を依頼することになるため,平成29年度分の助成金と合わせて使用する予定である.
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