本研究の目的は、低流速血液検出能に優れた超音波新技術を、重症虚血肢の日常診療における簡便な下肢血流評価として活かす可能性を検討することである。末梢動脈疾患患者の虚血肢において、皮膚灌流圧検査(SPP)よりも簡便な超音波検査を微小循環評価に用いることが可能であれば、臨床現場において有用であると考える。血行再建術の前後で超音波検査による微小循環評価(SMI)とSPPの比較を試みた。 同じ足底での評価であったが、術後にSPPの改善を認めていても、SMIの改善を認める症例と認めない症例があった。また、SMIの定量評価のために、画像を取り込んで血流表示の面積比を求めることを検討していたところ、新機種においてVascularity Index(VI)によるSMIの定量評価が可能となった。そこで、健常者における足底のSMIのVIを測定してみたところ、再現性には検者間格差、被検者間格差のほか、測定部位、装置設定、動脈拍動が影響すると考えられた。また、足底の微小循環をSMIにて評価するにあたり、VIが低値であることは不利であった。同じ微小循環の指標であるSPPと必ずしもSMI所見が一致しなかった原因は定かではなかったが、これらSMIによる足底の微小循環計測に伴う問題が影響している可能性が考えられた。 SMIは微小循環を非侵襲的に評価する方法として期待できるが、重症虚血肢においてSPPに代わる臨床的検査法となりうるためには、解決しなくてはならない課題があると考えられた。
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