高齢化に伴い閉塞性動脈硬化症等などによる末梢動脈疾患(PAD)の患者は増加の一途をたどっている。特に壊疽や潰瘍などを合併する重症下肢虚血(CLI)に対しては血行再建術が原則とされているが、手術不能例や再閉塞例も多く、本邦だけでも年間3000人以上が下肢切断を余儀なくされている。これに対し、 近年、手術不能症例にも対応可能な新しい治療法として血管新生療法が注目され、遺伝子治療や細胞療法、衝撃波療法などの研究が進められている。これまでの報告では、いずれの手法も一定の効果が示唆されているものの、動物モデルにおける急性期虚血からの回復や、一時的な末梢血流増加にとどまっており、 臨床 治験にまで歩を進めているものはわずかである。 本研究は、慢性下肢虚血性疾患に対する非侵襲的な新しい治療法としての、マイクロバブルと超音波による血管新生療法の開発と、実験に用いる動物モデルおよび実験デザインの最適化、および治療導入部位選択の指針の確立に注目した。 マウス下肢の主要動脈を種々の部位で切断もしくは切除することで作製した9種類の下肢虚血モデルマウスにおける急性期変化および慢性期末梢血流と、各部位における血管密度変化を比較することで、急性虚血の治療研究に適したモデルと、慢性虚血をターゲットにした治療研究に適したモデルがあることが明らかになった。また、治療研究においては、主要血流遮断点の近位から側副血行が再度主要動脈に流入するまでの区間が最適な治療導入部位になりえることが示唆された。 上記結果について英文化し、投稿に向けて準備を進めている。
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