【目的】高齢者大動脈疾患の緊急例はリスクが高く術後成績への影響が懸念される。非手術観察例を含めたアンケートによる意識調査の内容を構築するために、大動脈手術の遠隔成績を後方視的に評価する。 【方法】(1)2001年4月から2010年3月までの大動脈手術例を79歳以下の若年(Y)と80歳以上の超高齢(O)に分類し、各々の胸部大動脈手術(T)と腹部大動脈手術(A)における待期(EL)群と緊急(EM)群の術後死亡率と術後QOL分析を比較する。(2)2009年1月から2018年12月までに診断を受けた患者で2019年3月におけるQOLを手術例と非手術例に分けて検討した。 【成績】(1)病院死亡はY-T-EL群0例(0%)、Y-T-EM群0例(0%)、Y-A-EL群1例(0.8%)、Y-A-EM群6例(23.1%)、O-T-EL群0例(0%)、OT-EM群1例(5.8%)、O-A-EL群2例(7.4%)、O-A-EM群1例(9.1%)であった。SF-36のスコアをY-EL群、Y-EM群、O-EL群、O-EM群で比較すると身体機能は各々31.4±19.8、26.3±20.9、31.6±17.4、-2.6±8.1で超高齢緊急例で有意に低く、心の健康は各々49.0±11.1、48.7±9.2、50.8±9.8、40.1±10.1で全群が国民標準に近かった。(2)非手術例と手術例の身体機能は各々35.8±23.1、37.1±18.6、心の健康は各々51.7±11.0、50.9±10.3で両群に差はなかった。 【結論】80歳以上の高齢者緊急手術では術後の身体機能低下がQOLに影響を与えており個々の患者の術前状態を加味して術式を決定する必要がある。しかし手術によるQOLへの影響は大きくないと判断できる。
|