研究課題/領域番号 |
16K10652
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小山 博之 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (10241994)
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研究分担者 |
宮原 拓也 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20704943) [辞退]
三浦 裕 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 客員研究員 (40557980)
保科 克行 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90571761)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 虚血肢モデル / ナノ粒子 / PICsome |
研究実績の概要 |
今回我々は、急性下肢虚血に対して側副血行路の発達を促進する新たな治療法を構築するべく研究を行った。 ラットの左大腿動脈を種々の範囲で切除し、動脈造影で側副血行路のできる部位を確認した。下腹壁動脈;浅腹壁動脈分岐部の大腿動脈を切除すると、内転筋>恥骨筋>半膜様筋内に側副血行路が形成されることがわかった。続いて、上記急性下肢虚血モデル作成24時間後に径30nmと100nmの蛍光ナノ粒子を静注し、上記内転筋等に粒子が集積するかを確認した。ナノ粒子はポリイオン複合体型中空粒子(PICsome)を用いた。径100nmのPICsomeを投与した群では、投与24時間後・72時間後において内転筋・恥骨筋で健側より有意に強い蛍光集積が認められた。径30nmのPICsomeを投与した群では、いずれの筋肉にも有意な集積の差は認められなかった。 次にナノミセル化する薬剤を選定した。各種のサイトカインを机上でシミュレーションしたところ、IL-1bが最も安定してミセルを形成する可能性高かったため、IL-1bのミセル化を行った。無水シトラコン酸(Cit)と2,5-dihydro-4-methyl-2,5-dioxo-3- furanpropanoic acid(FP)の2種類の低分子を用いて表面電荷の調節を行い、ポリエチレングリコール鎖とポリ陽イオンの複合ポリマーを用いてPICmicelleを作成することに成功した。 一方、低分子を表面に結合させたペプチドは表面構造が変化することから活性を失うことがあるため、その検証を行った。修飾前のIL-1b・Cit, FPをそれぞれ結合させた計3種類のIL-1bを、予め培養した線維芽細胞に投与した。投与24時間後に培養液を回収し、産生されるIL-8の量を定量することでそれぞれのIL-1bの生理活性を評価した。Citを結合させたIL-1bはほぼ完全に活性を失っていたが、FPを結合させたIL-1bは修飾前の1/2程度の活性を有していた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
表面を修飾したIL-1bの活性確認実験において、当初はマウスTリンパ球(D10.G4.1株)を用いて細胞増殖能を評価する方法で行う予定であった。しかし同細胞株の培養に難渋し、線維芽細胞を用いる方法に切り替えた。しかしそちらの系においても、投与するIL-1bの濃度設定や採取する培養液の希釈率を適切に設定することが困難であり、またIL-8の定量方法(ELISA法を用いた)にも再現性がなかなか得られず、複数回の実験を重ねる必要が生じた。そのため計画より進捗が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
FPで表面を修飾したIL-1bを内包した径100nmの蛍光ナノミセルを現在量産中である。今後はこのナノミセルを虚血モデルに投与し、PICsomeと同様の集積を示すか・下肢の血流の改善が得られるかを検討する予定。下肢血流の評価はLaser Doppler Imagingを用いて足部の血流を健側と比較する。また組織学的評価を行い、ナノ粒子の動態やIL-1bの作用機序についても検討を行う。血液検査所見なども集積し、臓器障害の有無を含めた安全性についても評価する
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次年度使用額が生じた理由 |
ナノ粒子の最適化に時間がかかり、その後に予定していた動物への投薬のスケジュールがずれこんだため。
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次年度使用額の使用計画 |
動物への投与予定の薬剤の購入費として予定している。
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