研究課題/領域番号 |
16K10657
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉本 昌之 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (00447814)
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研究分担者 |
児玉 章朗 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (10528748) [辞退]
古森 公浩 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40225587)
坂野 比呂志 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80584721)
新美 清章 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (50467312)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腹部大動脈瘤 / ステントグラフト / 3Dワークステーション |
研究実績の概要 |
本研究は3Dワークステーション(Aquarius; TeraRecon)を用いて腹部大動脈瘤患者の術前およびステントグラフト留置後の造影CT画像 の形態学的計測・解析を行うことにより、1)腹部大動脈瘤に対する術前治療計画の最適化を図る;2)ステントグラフト留置後の動脈瘤および動脈のリモデリングの長期的影響(再治療の必要性)の評価を目指すものである。我々はこれまでの研究で、通常の平面(Axial view)のCT画像ではなく3Dワークステーションによる立体的解析が腹部大動脈瘤の正確な形態測定においては有効であることを示しており、この成果は2014年の欧州心臓血管学会のガイドラインにも既に引用されている(2014 ESC Guidelines on the diagnosis and treatment of aortic diseases. Eur Heart J. 2014)。また、3Dワークステーションによる大動脈瘤および分枝動脈の術前の形態解析により、ステントグラフト留置後の末梢側のmigrationや分枝型ステントの腎動脈分枝の中期開存の予測因子を明らかにし、学会および論文発表した。更に3Dワークステーションにおける測定者間の測定誤差が与える影響に関しても明らかにし、既に論文報告を行った。今回の研究はこれらを発展・延長上に位置するものであり、これまでに蓄積された症例の形態学的データを解析することで術前の腹部大動脈瘤および分枝血管の形態・解剖学的特徴から短期的・長期的合併症の発生およびステントグラフト後の再治療の必要性を予測するモデルの確立を最終的な目標に設定し、研究を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の施設における腹部大動脈瘤に対するステントグラフト留置術施行患者(2007年7月~2016年まで;約600名)のうち、本研究のinclusion criteriaに合致する症例を選別し、対象となった症例に関して、背景・臨床データをretrospective(研究開始後の患者に関してはprospective)に収集し、データベースを構築した。また、形態学的測定項目について、術前、術直後(退院前)、術後3ヶ月、 6ヶ月、1年(以後、一年ごと)の時点でのCT画像から3Dワークステーション上で測定・定量化を行い、データベースを構築した。再治療(reintervention)イベントも研究開始後にしばしば発生しており、これらも随時、前向きにデータベースへと追加・更新を行っている。対象となる症例数は300例を越えており、延べ観察期間(症例数×follow-up期間)のデータ収集と更新には今後も時間と労力を要するものの、概ね順調にデータの蓄積は進行している。構築したデータベースに基づいた統計学的解析も進めており、一部の結果に関しては、既に学会や論文での発表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
統計学的解析のための臨床データ・画像計測データのデータベースの構築/更新作業を今後も続行していく。構築した症例データベースについて、各種パラメーター(形態学的特徴、臨床データ、 併存疾患、術前・術後合併症(グラフト関連合併症を含む)、使用されたステントグラフト・デバイス)を統計学的に解析し、既に報告されている他施設の患者群(症例数の多い報告は主に海外施設からのものとなる)と比較し、我々の患者群の特徴を明らかにする。術前・術後の形態学的データと長期臨床成績との関連について、更なる統計学的解析を進める。瘤径および瘤の体積のデータからステントグラフト留置術後の瘤縮小に寄与する因子を統計学的に分析を行ってきたが、既に幾つかの有意な因子が同定されてきており、更なる解析を進める。三次元ベクトル量として定量・データベース化された瘤のリモデリング過程および留置されているステントグラフトの形態変化を統計学的に解析し、瘤のリモデリング・瘤縮小がグラフト関連 合併症に与える影響について分析を開始する。これらの統計学的解析結果から、術前の形態学的特徴から長期予後を予測しうる統計学的モデルを構築することを最終的な目標として設定しており、これにより、ステントグラフト治療に適した症例の解剖学的選択基準を明らかにすることを目指す。一方、ステントグラフト留置術後の長期フォロー中の過程における形態変化からグラフト関連合併症の発生を予測する統計学的モデルの構築も行う。とくにendoleakの発生とそれによる治療後の瘤径拡大に関連する予測因子に関しては有望な結果が得られてきており、更なる症例数・follow-up期間の追加と統計学的解析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
思っていた額と実際の額に誤差が生じたため、残高分を物品費として使用予定。
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