研究課題/領域番号 |
16K10660
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
片山 桂次郎 広島大学, 病院(医), 助教 (40773057)
|
研究分担者 |
末田 泰二郎 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 教授 (10162835)
高橋 信也 広島大学, 病院(医), 講師 (70423382)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ステントグラフト治療 / Adamkiewitz動脈 / 対麻痺 / 脊髄虚血障害 / 運動誘発電位 |
研究実績の概要 |
胸部下行大動脈瘤に対するステントグラフト治療(TEVAR: thoracic endovascular aortic repair)にて発生する遅発性対麻痺を予測すること、また予防策を講じて対麻痺をゼロにすることを目的として臨床研究および兎モデルを用いた急性実験を行う。 1)兎を用いた遅発性対麻痺モデルを作成することを目的とした。全身麻酔下に側腹部縦切開から腹部大動脈を露出し、腰動脈を切離するモデルは、ステントグラフト留置時のsegmental arteryの状態を模倣するものであるが、急性期に対麻痺を発症するあるいは発症しないという経過を辿り、遅発性対麻痺モデルには程遠い結果となった。腸骨動脈領域の枝を結紮することは、手技的に難易度が高く、実験系として不適切であると考えられた。バルーンでの虚血再灌流を追加することは、immediate paraplegiaの発症頻度を著しく上昇させた。 2)TEVAR術中にMEPモニタリングを72例に施行した。脊髄傷害(SCI)に関連する術前状態と術中因子を評価した。またMEPの低下とSCIの発生に対する危険因子を決定するために多変量解析を行った。SCIは7例(10%)に発生し、1例がimmediate paraplegiaで、6例はdelayed paraparesisであった。Delayed paraparesisのうち5例は完全に回復したが、1例は下肢脱力と痙性片麻痺を残し、MRIにて脳梗塞および脊髄梗塞を診断した。多変量解析は術中最低平均血圧が55mmHg以下とステントグラフトの下端がTh9以下であることが独立した危険因子であるとした。MEPの低下自体は、SCIの発生とは関連しなかった。ステントグラフトの下端がTh9以下であることとSCIの発生には関連を認めたが、症例数が少ないことから多変量解析にては明らかではなかった。MEPはステントグラフトの位置と循環動態に左右された。MEPはある一部の症例に関して、適切に使用される必要があると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1)TEVARを行いかつMEPを行うべき臨床例が少なく、目標例数(100以上)には程遠い。 2)白兎を用いた遅発性対麻痺の実験系はすでにkakinohanaらにより報告されているが、類似の方法をとってみても遅発性対麻痺の再現性ある作成はできない状況が続いている。実臨床のTEVARで見られる遅発性対麻痺は、ほとんどの症例で機能回復を認めるが、実験系での遅発性麻痺の報告は対麻痺の状態が維持されているかと考えられ、異なる病態を見ている可能性がある。
|
今後の研究の推進方策 |
1)症例の積み上げを継続する 2)兎モデルで、対麻痺作成プロトコルを行ったものの対麻痺にならなかった場合の、術後数日での脊髄所見の比較、などを含めて、検討しなおしていく。髄液圧の測定を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験系が不成功が続いたため、一時急性実験を遅らせた時期があるため差額が生じている。追加の動物実験をするために残額はすべて使用される予定である。
|