研究課題
胸部下行大動脈瘤に対するステントグラフト治療(TEVAR: thoracic endovascular aortic repair)にて発生する遅発性対麻痺を予測すること、また予防策を講じ て対麻痺をゼロにすることを目的として臨床研究および兎モデルを用いた急性実験を行った。 1)兎を用いた遅発性対麻痺モデルを作成することを目的とした。全身麻酔下に側腹部縦切開から腹部大動脈を露出し、腰動脈を切離するモデルは、ステントグ ラフト留置時のsegmental arteryの状態を模倣するものであるが、急性期に対麻痺を発症するあるいは発症しないという経過を辿り、遅発性対麻痺モデルには程 遠い結果となった。腸骨動脈領域の枝を結紮することは、手技的に難易度が高く、実験系として不適切であると考えられた。2)TEVAR術中にMEPモニタリングを81例に施行した。脊髄傷害(SCI)に関連する術前状態と術中因子を評価した。またMEPの低下とSCIの発生に対する危険因子を 決定するために多変量解析を行った。SCIは7例(9%)に発生し、1例がimmediate paraplegiaで、6例はdelayed paraparesisであった。Delayed paraparesisのうち5例は完全に回復したが、1例は下肢脱力と痙性片麻痺を残し、MRIにて脳梗塞および脊髄梗塞を診断した。単変量解析は術中最低平均血圧が 55mmHg以下とステントグラフトの下端がTh9以下であることが因子として挙げられ、多変量解析では、前者のみが独立した危険因子であるとした。MEPの低下自体は、SCIの発生とは関連しなかった。MEPはステントグラフトの位 置と循環動態に左右された。MEPはある一部の症例に関して、適切に使用される必要があると考えられる。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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