我々はこれまでに、動物モデルを用いた研究において、難治性皮膚潰瘍に対する自家細胞シートの有効性を証明してきた。しかし、自家細胞シート移植の課題は、細胞調整に要する時間がコストを押し上げていることである。そこで、我々は、難治性皮膚潰瘍に対して他家細胞シートを用いた治療法の開発を目指し、本研究を実施している。 本年度は、マウスモデルに対して自家積層線維芽細胞シートおよび他家積層線維芽細胞シートを移植し、その治療効果を検討した。 C3Hマウスの背部に作製した全層皮膚欠損に対して、自家細胞はC3Hマウス、他家細胞はC57BL/6マウスとして、マウスの尾から単離・培養した積層線維芽細胞シートを移植した。細胞シート移植6日後までは、自家および他家積層細胞シート移植群に治療効果は同等であったが、移植9日後では、自家積層細胞シート移植群は、他家積層線維芽細胞シートよりも有意な治療効果を示した。また、GFPを発現するC57BL/6マウス由来の積層線維芽細胞シートを、C3Hマウスの背部に作製した全層皮膚欠損に移植した実験における組織学的解析では、移植6日後までは、GFP陽性の細胞が観察された。これらの結果から、本研究の動物モデルにおいて、他家積層線維芽細胞シートは、移植6日後までは、移植部位に存在することで、治療効果を発揮していることが示唆された。
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