研究課題/領域番号 |
16K10666
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 智 自治医科大学, 医学部, 講師 (30382881)
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研究分担者 |
木村 直行 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20382898)
吉崎 隆道 自治医科大学, 医学部, 臨床助教 (20743115)
山口 敦司 自治医科大学, 医学部, 教授 (50265287)
川人 宏次 自治医科大学, 医学部, 教授 (90281740)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 血管炎モデルマウス / IL-25 / IL-33 |
研究実績の概要 |
指定難病である血管炎症候群は重篤な難治性自己免疫疾患であり、病態機序の解明は未だ十分でない。血管炎へのIL-25とIL-33の関与 を究明するため、自然発症血管炎モデルマウスであるIL-1Ra遺伝子欠損マウス(Il1rn-/-)を用いて、IL-25遺伝子欠損マウス(Il25-/-)とIL-33遺伝子欠損マウス(Il33-/-)の各々と交配し、二重欠損マウスを作成した。それぞれのマウスの大動脈基部の組織標本を作成し、H&E染色と EVG 染色を行い、 血管炎の発症率を評価した。12週齢のIl1rn-/-マウスでは40.6% (26/64)であるのに対して、Il1rn-/-Il25--マウスで は6.9% (2/29, p=0.001) と減少を認めた。一方、Il1rn-/-Il33-/-マウスでは47.1% (16/34, p=0.57)と有意差を認めなかった。尚、16週齢では両群とも有意差を認めなかった。これらの結果から、IL-25欠損は12週において血管炎の発症に抑制的に作用し、IL-33欠損は血管炎の発症には関与しないことが示唆された。 次に、本疾患モデルにおける、IL-25とその受容体であるIL-17RBの発現細胞を同定するため免疫染色を行ったが、大動脈組織でのIL-25およびIL-17RB発現細胞を同定できなかった。GFP-Il1rn-/-マウスを用いて、蛍光免疫染色でIL-1Ra発現部位が大動脈血管内皮細胞であることが分かった。 IL-25発現細胞において、内皮および間質細胞と炎症細胞のどちらが関わっているかを確認するため、Il1rn-/-マウスとIl1rn-/-Il25-/-マウス間で、骨髄移植実験を行ったところ、レシピエントがIl1rn-/-Il25-/-マウスでは血管炎の発症が抑制された。組織由来のIL-25が血管炎発症に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Il1rn-/-マウスでIL-25遺伝子発現の亢進は確認できたが、タンパク質レベルでの評価ができていない。フローサイトメトリーでは回収細胞数が少なく、組織学的な免疫染色での実験系を再検討しているが、未だ同定できていない。また、炎症関連の遺伝子発現に有意差が認められず、血管炎発症でのIL-25のメカニズムの検討が不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
Il1rn-/-マウスとIl1rn-/-Il25-/-マウス間での血管における遺伝子発現変化を網羅的な遺伝子解析で評価する。凍結組織のH&E染色で評価し、余った血管組織から良好なtotal RNAを抽出することができた。今後、これらのtotal RNAを用いてIl1rn-/-マウスとIl1rn-/-Il25-/-マウスの血管炎/非血管炎での遺伝子発現変化をマイクロアレイで解析する。 また、免疫染色でのIL-25の同定のため、組織の固定などプロトコールを再検討し、評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 免疫染色でIL-25、IL-17RB発現細胞を同定し、その結果を基にIn vitroの実験を予定していたが、まだ確かな結果が得られていないため、未使用額が生じた。 (使用計画) このため、次年度に免疫染色による発現細胞を同定し、その結果を基に細胞培養およびIL-25の添加実験などを計画する。また、マイクロアレイを用いてIL-25欠損による遺伝子発現変化を網羅的遺伝子解析で評価する。
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