研究課題
大動脈解離は、大動脈壁の内膜中膜複合組織の中断と中膜層の破断によって生じる。大動脈解離は、進行性の組織破壊により、重篤な組織虚血、心タンポナーデ、大動脈弁機能不全、大動脈破裂を引き起こす致命的な疾患である。近年の研究により、大動脈解離病態におけるJAK/STAT経路を含む炎症応答の重要性が明らかになった。しかし、どのようにJAK/STAT経路が、大動脈解離における進行性の組織破壊に関与しているかはまだ十分明らかにされていない。 本研究は、平滑筋細胞におけるJAK/STAT経路の役割に着目し、炎症応答が、大動脈解離の進展や病態に関連する組織破壊にどのように関与しているかを解明することを目的とした。ヒト大動脈解離組織の免疫組織化学染色により、中膜の平滑筋細胞におけるSTAT3の活性化が示された。βアミノプロピオニトリルとアンギオテンシンII投与により解離を発症するマウス大動脈解離モデルでも平滑筋細胞でSTAT3が活性化していた。我々は、JAK/STAT経路の抑制因子であるSOCS3遺伝子を平滑筋特異的にノックアウトし、JAK/STAT系の感受性を高めたマウスを作成した(smSocs3-KO)。smSocs3-KOマウスでは、野生型と比較して発症する大動脈解離がより軽症であった。smSocs3-KOマウスの大動脈では、発症前の炎症応答の軽度の活性化、線維芽細胞の増加、膠原線維の蓄積、大動脈壁強度の増強が認められた。解離抵抗性は、大動脈壁の強化によるものと考えられた。急性期の炎症応答は、大動脈解離において組織破壊を促進するとされている。しかし、平滑筋細胞における炎症応答は、大動脈破壊を抑制し、大動脈を保護することが示唆された。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Journal of the American Heart Association
巻: 7 ページ: e007389
https://doi.org/10.1161/JAHA.117.007389
巻: 7 ページ: e007750
https://doi.org/10.1161/JAHA.117.007750