研究課題
合成致死性のスクリーニングに向けた培養細胞の準備を行った。本研究では、合成致死のスクリーニングとして、isogenic cell line を用いて、siRNA あるいはmicro compound のライブラリーにより増殖能の変化を検出する手法を採用する計画である。すなわち、変異型KRAS を抑制し、同時にさらに別な標的をスクリーニングすることで合成致死に有効な分子を特定することを想定している。したがって、KRAS 変異細胞株であるA549を用いて、KRas の抑制を行ったisogenic cell line を作製して親株と共培養を行い、siRNA ライブラリーを用いたスクリーニングを行う計画である。KRas の抑制は、p190RhoGAP の安定ノックダウンにより得られることをA549(A549p190KD) を用いて確認しているので、A549 の親株と共培養するisogenic cell lineとして使用する。共培養を行った後に、薬剤ライブラリーなどによる処理を行った場合、それぞれの細胞における増殖の違いを認識する目的で、A549とA549p190KDのそれぞれに、異なる蛍光を発現する遺伝子の導入を進めた。それぞれの細胞に対して、A549親株に対してはGFP、A549p190KDに対しては赤色蛍光をプラスミドベクターを用いて導入することとした。A549に対するGFPの発現は成功し、十分な強度の蛍光発現が確認された。一方、A549p190KDに対する赤色蛍光の導入は不十分であった。遺伝子の導入効率あるいは蛍光遺伝子の発現強度を規定するプロモーターに問題がある可能性が考えられる。
3: やや遅れている
今後の実験に使用する2種類の細胞について、一方においては蛍光色素の導入が得られたが、もう一方についてはまだ十分な蛍光色素の発現が得られていないため。
蛍光遺伝子を導入するベクターを変えてA549p190KDに対する蛍光遺伝子の導入を行う。その後に、当初の計画通り、創薬を想定したsiRNA ライブラリーが発売されているので、キナーゼや細胞増殖、細胞制御に関わるライブラリーを用いてスクリーニングを行う。96 ウェル培養プレートでisogenic cell lineと親株を共培養した状態で、siRNA の導入を行い、72 時間後に各ウェルの蛍光色素強度を測定する。これによって、有意にKRAS 変異細胞において相乗的に細胞増殖抑制効果を示す分子の特定を目指す。上記により特定された分子について、in virto の検証を行う。対象となる分子をノックダウンまたは薬剤による活性阻害を行い、増殖抑制効果が再現される事を確認する。また、KRAS 変異細胞における特異性の確認も必要であるので、KRAS 野生型の細胞も共に使用して、関連する蛋白の発現や活性の状況を解析することや細胞周期解析を行って、増殖抑制と合成致死の機序を明らかにする。
実験用品の購入に使用する予定があったが、わずかに残額が生じた。
次年度の実験消耗品に使用する予定である。
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