【背景】本研究初年度(平成28年度)ではmonophosphoryl lipid Aを用いたpharmacological preconditioning(PPC)におけるheat shock proteins(HSPs)の発現を再検討したところ、HSP-27はearly phase PCに、HSP-70はlate phase PCに関与することが示唆された。この結果を参考に、平成29年度ではHSP-27/HSP-70を用いてPPC が可能かどうかを検討するも、投与したrecombinant mouse HSP-27/HSP-70(rHSP27/rHSP70)がマウス体内で全く作用していない可能性を認めた。そこで予めMAPKAP kinase-2でリン酸化を誘導したrHSP27/rHSP70(prHSP27/prHSP70)を用いたところマウスへの組織移行を認めたので(平成30年度)、平成31年度はprHSP-27を用いたPPC が可能かどうかを検討した。 【方法】prHSP-27(2.5mg/kg)及び生食を前投与したC57BL/6Jマウスに30分後「60分間虚血+180分間再灌流」の肺虚血再灌流(I/R)を負荷し(投与群/非投与群)、肺虚血再灌流障害(LIRI; permeability index、肺胞洗浄液中の細胞数、MPO活性)に加えMyD88/TRIF/NF-κB活性及びHSP-27発現を評価した。対照として「5分間虚血+5分間再灌流+5分間虚血+5分間再灌流+5分間虚血+30分間再灌流+60分間虚血+180分間再灌流」のischemic PC(IPC)+I/Rモデルを用いた(IPC群)。 【結果】prHSP-27投与群では非投与群と比べLIRIは有意に抑制された。これらの結果はIPC群とほぼ同等であった。また、prHSP-27投与群ではI/R直前にHSP-27の有意な発現を認めるもMyD88/TRIF/NF-κBの有意な活性化を認めなかった。 【考察】HSP-27を用いたPPCが確立された。HSP-27は予めin vivoでのリン酸化誘導が必要であった。細胞保護作用においてNF-κBの関与を必須とせずHSP-27による直接的作用か、間接的なapoptosis抑制作用かのいずれかの可能性が示唆された。
|