研究課題/領域番号 |
16K10677
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
寺本 晃治 滋賀医科大学, 医学部, 特任講師 (10452244)
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研究分担者 |
五十嵐 知之 滋賀医科大学, 医学部, その他 (00510314)
片岡 瑛子 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (00746919) [辞退]
醍醐 弥太郎 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (30345029)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 呼吸器外科学 / 腫瘍免疫応答 / 腫瘍微小環境 / がん間質 / がん関連線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
非小細胞肺がんに対するがん免疫治療は、免疫チェックポイント阻害薬の登場により注目を浴びているが、それでも、未だ根治には至らず、非小細胞肺がんの根治のためには、新規の概念に基づくがん免疫治療法の開発が必要である。本研究では、非小細胞肺がん組織の不均一性に着目し、がん間質の“pro-tumorigenic” な機能、特に、がん組織の増大に伴って生じる低酸素状態という特徴的な腫瘍内環境において、代表的ながん間質細胞であるがん関連線維芽細胞に制御を受けるがん免疫応答に焦点を当てた。 本年度の研究においては、腫瘍微小環境による抗腫瘍免疫応答の制御の観点から、がん関連線維芽細胞における免疫チェックポイント分子Programmed cell death ligand 1 (PD-L1) の発現について解析した。その結果、非小細胞肺がん組織由来のがん関連線維芽細胞においても、がん細胞と同様にPD-L1分子の発現を認めた。さらに、がん関連線維芽細胞におけるPD-L1の発現レベルは、タンパクレベルおよびmRNAレベルともに、サイトカインであるインターフェロンγにより可逆的に発現制御を受けることが判明した。さらに、リンパ節転移および遠隔転移のない非小細胞肺がん切除例に対して、PD-L1免疫組織染色を行い、がん関連線維芽細胞におけるPD-L1発現と予後(無再発生存期間)との関連について解析したところ、PD-L1高発現群では、PD-L1低発現群に比較して、有意に無再発生存期間の延長を認めた。活性化した腫瘍浸潤リンパ球が分泌するインターフェロンγにより、がん関連線維芽細胞は影響を受け、PD-L1発現に至るものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低酸素状態の腫瘍組織において、がん関連線維芽細胞のpro-tumorigenicな機能について 理解できつつある。つまり、がん関連線維芽細胞のがん細胞に対する増殖効果、エフェクター免疫担当細胞に対する免疫抑制効果により、pro-tumorigenicな腫瘍微小環境を構築しているものと考えられる。低酸素状態における抗腫瘍免疫応答の抑制には、PD-L1以外に、免疫抑制性サイトカインTransforming growth factor-beta (TGF-beta) が関与していると考えているが、当初、TGF-betaの発現には、低酸素応答における鍵分子(転写因子)であるHypoxia inducible factor 1 (HIF-1) が、直接的に制御していると想定していた。しかし、今年度、HIF-1をノックアウトした肺がん細胞株を作成して解析した結果、必ずしもHIF-1により直接的な発現制御を受けているようでなかった。従って、TGF-betaの発現制御に関しては、別のサイトカインによる影響あるいは分泌後の影響について解析する必要が生じてきた。
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今後の研究の推進方策 |
低酸素状態の腫瘍組織における、がん関連線維芽細胞に抗腫瘍免疫応答の抑制効果について、さらに解析を進める。つまり、PD-L1を発現したがん関連線維芽細胞のエフェクター免疫細胞に対する抑制機能について、また、がん関連線維芽細胞が分泌するTGF-betaについて、その発現制御について、ヒト非小細胞肺がん由来のがん関連線維芽細胞を用いて解析を進める。また、このようながん関連線維芽細胞のpro-tumorigenicな機能が、抗線維化薬によって阻害され得るのか解析を進める予定である。
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